アフリカでクリスマスの巻
無事、天然キャラのめぐみちゃんとの合流を果たした僕らは、翌日の朝、リビングストンを発ち、ザンビアの首都ルサカを目指した。
バス代は、一人55000クワチャ(約1650円)。
リビングストンを10時半に出発し、ルサカには6時間で着く予定である。
しかしオラは、ザンビアのバスを少し警戒していた。
ジョリーボーイズの宿では、偶然タイのバンコクで知り合った日本人旅行者と再開したのであった。
旅の話で盛り上っている時に「ザンビアのバスにはくれぐれも気をつけてくださいね!」と忠告されていたからである。
ザンビアのバスの運転手はとにかく乱暴運転で有名なのだと言う。
その旅行者の彼が、ルサカからリビングストンに向かうバスに乗っていた時の出来事。
彼を乗せたバスが猛スピードで峠の坂道を走っていたところ、なんとバスがいきなりスピンし、そのあと蛇行運転になってコントロールを失ったそうだ。
道路の外は崖になっていたので運転手は被害を少なくするために、山側にバスをぶつけて無理やり止めた。
しかしその時寝ていた乗客は、鼻は折るわ、頭を打って血を流すわで、大変な事故になってしまったようだ。
幸いその彼は目を覚ましていたので、衝撃の後もとっさに受身を取ることができ、なんとか無傷で済んだらしい。
とにかく出発直後から運転が乱暴でおちおち寝られず、ある程度の事故の覚悟は初めからしていたというのだ。
そんな旅行者の恐ろしい体験談を聞かされた翌日の朝、僕らを乗せた大型バスはリビングストンを出発した。
案の定バスの運転手は飛ばしに飛ばした。
車線の無いアスファルトの狭い道を猛スピードで飛ばした。
たまに対向車が近づいて来ても全くアクセルを緩めようとしない。
普通車の対向なら大抵向こうの方が路肩にはみ出して避けてくれるが、対向相手が同じ大型バスやトラックなら、見ていてひやひや物である。
どちらともが、スピードを緩め、車線をはみ出し避ければいいのにそんなことはしようとしない。
先に避けた者が負けみたいな思いがあるようで、うちのバスの運転手は絶対自分からは避けたりはしなかった。
そして我が道のようにどうどうと構え走っていた。
16時半頃、バスはターミナル内に入った。どうやら無事ルサカ到着したようである。
僕らはジョリーボーイズで出会った旅行者に紹介された宿、チャチャチャBP(一人1泊42000クワチャ=約1260円)を目指して歩いた。
一番先頭にぷる君とダイタ、一番後ろを菊ちゃんとあけちゃんが付いて来るようなかたちだった。
宿はバスターミナルから1キロほど歩いた田舎の住宅街のような場所だった。
荷物を降ろした僕らは、今夜の宴会の準備をするためにスーパーに出かける事にした。
今日は、クリスマスイブだったのだ。
今回は、みんなから少し多めにお金を集め、お酒やケーキやスモークチキンなど、リッチなパーティーを開こう!
アフリカでクリスマスなんてなかなか味わえないので、オラは、調子に乗り過ぎていつも以上にお酒を飲んでしまい、おかげで次の日、二日酔いで寝坊してしまった。
次の移動地タンザニアへの鉄道チケットを買いに行く時間に遅れそうになり、鉄道の残り席数を気にしていたマッキーに大目玉をくらった。
鉄道チケットは、ルサカバスターミナル近くのタンザンレールウェイ事務所で予約販売されていた。
しかしその日は、事務所関係者の人に休みだと言われ、翌日に出直すことにした。
翌日朝8時前から事務所の前に並ぶと、すでに数人の移動客が受付が始まるのを待っていた。
翌日出発の鉄道チケットは、なんと僕らでギリギリだったようで、なんとか全員分のチケットの引換券を受け取ることができた。
最初に僕らがチケットを買おうとしていた日がたまたま事務所の休みではなく営業日なら、遅れて行った僕らは、全員分のチケットを買えなかったかもしれない……。
そう思うと自分が二日酔いで寝坊したことをオラは深く反省したのであった。
停まったのは小さな街の商店街であった。
オラはドライバーに出発時刻とトイレの場所を確認して用を足しに行った。
近くに公衆トイレのようなものは無く、建物の中にビリヤード台が置いてある、夜はBarにでもなる様なお店でトイレを借りることになった。
オラが用を足して建物から外に出ると、マッキーと天然キャラのめぐみちゃんもトイレに行きたいと言ってきたのでトイレの場所を教えてあげた。
オラはマッキー達が帰ってくるまで、ライターを売っているお店がないか、少し探してみることにした。
バスが停まっている場所から少し歩いて角を曲がったところに雑貨屋を見つけたので、お店の主人にライターを売ってないか、訪ねてみた。
するとお店の主人は、「ちょっと待て」と言い残し、どこかに走って行ってしまった。
海外のお店では、自分の店に無い物をほかの店で買って高めに売ったりすることが多いのだ。
う~ん、でもあまり時間が無いだけどなぁ、とオラはイライラしながら店の主人を待っていた。
するとなんと、僕らのバスが、クラクションをパンパン鳴らし、角を曲がり出発しようとしているではないか!!
げー! ちょっと待ってくれ~!!
オラは走ってバスを追いかけた。
バスの運転手はトロトロ走りながら、早く飛び乗れと言ってきた。
それに気づいた店の主人がこっちに走ってきて、走っているオラにライターを渡してくる。
「ハウマッチ!」
「3000クワチャ!」
とりあえず、バスに乗り込み財布を覗くと小さいお金が入っていない。
店の主人は、バスの運転手にお金を請求すると、運転手は、車をトロトロと転がしながら自分の財布からお金を出そうとしていた。
オラは、店の主人がせっかく走って買いに行ってくれたので、悪いと思ったが、後での精算がややこしいのでライターを店の主人に返した。
オラはすんませんと、乗客に頭を下げ席に戻ろうとした時、マッキーと天然キャラのめぐみちゃんがいないことに気づいた。
他のメンバーは寝ていてこの状況に気がついていない。
慌ててバスの運転手に止まってくれと言うが、全く止まろうとしてくれない。
ふと見るとバスの扉がまだ閉まっていないことに気づいた。
オラはバスから飛び降り、バスを通せんぼして無理やり止めた。
すると、マッキーとめぐみちゃんが、慌ててバスに向かって走ってきているのが見えた。
ホッ、 危うくみんながバラバラになるところであった……。