タンザニアから移動の巻
僕らはザンジバル島から帰って来た後、翌日出発のケニアのナイロビまでのバスの移動チケットを買うため、オラ・ようちゃん・めぐみちゃん・ダイタの4人で、タクシーに乗ってウブンゴ・バスターミナルに向かった。
渋滞の酷いダルエスサラームのメイン道路を走り、車はバスターミナルに到着した。
僕らは、ダルエスサラームの初日に観光案内所で聞いていた3社のバス会社をバスターミナル内で探した。
僕らを連れてきたタクシーの兄ちゃんが、バス会社の場所を教えてくれたのだが、どこのバス会社に行っても2日後まで空きが無いという。
どうしよう……。
僕らが途方に暮れていると、僕らの背後から声をかけてくる男がいた。
なんと、空いているバスがあるのだと言うのだ。
むやみに声をかけてくる現地人はみな怪しく思ってしまうのだが、とりあえず、ターミナル内にあるそのバス会社まで連れて行ってもらうことにした。
そのバス会社の看板には、『サイババエキスプレス』と書いてあった。
なんか、胡散臭い名前だなぁと思いつつも聞いてみると、明日の朝出発して一旦アルーシャまで行き、そこから乗り換えでナイロビまで行くとのことだ。
ホントにその日のうちにナイロビに着くのか心配であったが、バス会社の人は間違いないという。
ここではアルーシャまでのチケットしか買えないというし、かなり怪しい雰囲気はあったが、僕らが明日移動するにはこのバスに乗るしかない。
仕方なしにそこでダルエスサラームからアルーシャ間のバスチケット(一人25000シリング=約2450円)を購入した。
少し、訝しい点は残るものの、とりあえずの目的はこなせたと、仲間4人で納得することにした。
そして宿に帰るため、駐車場に戻ろうとしたその時、タクシーの兄ちゃんが言ってきた。
「オレだいぶ待ったし、チップもらわなあかんわ!」
「何やと!? 誰も待っててくれなんて言うてないやんけ!!」
しかし、タクシー兄ちゃんの横を歩いていたようちゃんが、言い返していた。
「明日もタクシー頼むからチップはその時一緒に払うよ!」
さすがようちゃん、とっさの言い返しが上手くなったなぁ、とオラは感心した。
明日5時半にウブンゴ・バスターミナルをバスが出発するので、僕らはタクシーの兄ちゃんに2台で4時半に宿の前に来るよう頼んだ。
翌朝4時半。
バックパックを担いで宿の外に出てみると、タクシーは一台しか停まってなかった。
しかも昨日のドライバーと違う人間だ。
2台頼んだのに、どういう事かと聞いたが、ドライバーはバスターミナルまで15分で行けるから一台でピストンすると言ってきた。
昨日の兄ちゃんは寝坊したのだろうか?
ええかげんやなぁ、ほんまチップ渡さんで良かったわ……。
他にタクシーは走ってなさそうなので、一応それでオッケーして、僕ら4人は先にバスターミナルに向かった。
昨日は渋滞で1時間も掛かったので、15分は無理だろうと思っていた。
しかし、キッカリ15分で着いてしまった。
タクシーの兄ちゃんは他のメンバーを拾いに宿へ戻った。
しかし他のみんなは、すぐに違うタクシーを見つけて僕らを追っかけてきていた。
さすがみんな、ちゃっかりしてるわぁ……。
僕らは早速バスに乗り込んだ。
乗務員の人がチケットをチェックしてまわっている。
その脇をかすめてポーターらしき親父がいち早くこっちにやってきた。
そして僕らだけに荷物の代金を請求してきた。
しかも、運賃の約半分の額。
「えっ、なにそれ? 昨日チケットを買う時に、他に料金は発生しないとバス会社の人言ってたで!」
しかし、親父は断固として払えと言う。
払わないと荷物がどうなっても知らないぞと脅してくるのだ。
あけちゃんが現地のお客さんに聞いてみたが払わなくていいはずだと言う。
「ほら、絶対おかしいよ!」
僕ら8人があまりにも、凄い剣幕で文句を言い出したので、親父は、少しひるんできた。
ちょっと涙目になり無言のまま僕らから離れようとしない……。
オラは少しかわいそうになってきた。
「この親父ちょっと泣いてるんちゃうん?」オラがそう言うと。
「いざぽん甘いわ、もともとこの人そんな顔してたやん!」とめぐみちゃんが言った。
ふだん温厚なめぐみちゃんが、現地人に文句を言っているのを初めて見たので、オラは少し戸惑った。
めぐみちゃんは、僕らがザンジバル島に行っている間、地元のタンザニア人達と遊んで仲良くなったみたいなので、この街の事が大変気に入っていた。
その大好きな街の人のイメージが崩れ去っていくのが嫌だったのではなかろうか……。
僕らは荷物が保障されないのは困るのと、もしかして荷物の大きさによって、ほんとうに値段がかかるかもしれないと思ったので、結局、荷物料を値切ってもらう事で、交渉を成立させた。
バスはようやく出発して昼を過ぎたくらいにキリマンジャロ観光の拠点となる有名な街、モシを通過。
バスの窓からはキリマンジャロ山がでっかく見えてきた。
少し雲がかかっているが、まぎれも無くキリマンジャロだ! 特に一番前の席に座っているめぐみちゃんは、大はしゃぎだった。
ふと後ろの席を見ると、ぷる君と楽しそうに話しているあけちゃんの姿が見えた。
あけちゃんが、菊ちゃん以外のメンバーとの相席を取るのは、数ヶ月ぶりであった。
残りの時間を仲間と過ごそうとしているのが、オラには直感で分かった。
ふたりと旅を続けるのも長くはなさそうだと感じ、オラは心の奥から寂しさが込み上げてくるのを感じた。
そして乗り換え予定のアルーシャに到着。
ところがナイロビ行きのバスはすでに発車してしまった後だった。
やっぱり、やられた……。
結局僕らは、その日のうちにケニアにはたどり着けず、アルーシャに1泊する事になった。
「見て見て?この100ドル札! 若干札の大きさが違うだろ? それに印刷も少しズレてるのがわかるかなぁ?!」
どうやらぷる君は、ここダルエスサラームの街のやみ両替で100ドル札を交換してきたようだ。
オラは、その100ドル札を天井の光に当ててみた。
すっ、透かしがない……。
元印刷屋で働いていたようちゃんが、大声で言った。
「これインクジェットの印刷や!!」
「僕もすぐに偽札やと気づいたんだけど、これも貴重やし、よしと思ったんだよ。」
さすがぷる君はプラス思考(見栄っ張り)だなぁ~とオラは思った。
※国によっては所持しているだけで罪になるので注意が必要だ。
バス停から徒歩5分以内の場所に美味しそうなレストランを見つけた。
レストランの主人は今日が年越しだからなのだろうか、それともいつもそういうテンションなのだろうか、やたらノリノリである。
チキン料理、ビーフ料理、ピザまでメニューにあった。
ここで食べた料理は安い割りに超美味い!!
特にピザは釜で焼いてくれるのでかなり美味しかった。