仲間のピンチの巻
オラはネパール行きをすごく楽しみにしていた。
それはヒマラヤの源流から流れる激流下り(ラフティング)に参加することを心待ちにしていたからである。
いよいよ僕らはインドを一旦離れ、癒しの地ネパールに移動である。
バラナシ到着日に宿のオーナーのラジャさんにネパール行きのツアーバスの予約を取ってもらっていた。
ところがバラナシに入ってからというもの仲間が次々にダウンして行った。
症状は軽いものの、オラを筆頭にマッキー・あけちゃんという具合に順番に調子が悪くなりネパール出発前々日、オッキーが下痢と嘔吐、更にはようちゃんが下痢と熱に見舞われた。
仲間が交代で看病したおかげで、幸いオッキーは一日で復活したものの、ようちゃんは更に悪化、39度の熱に襲われていた。ガンガーで泳いだせいだろうか?
仲間からもらった薬で様子を見ることにしたが、出発当日になってもようちゃんの熱は下がっていない。
チケットはすでに購入済みなのでキャンセルもできない。
しかし病人一人残して移動するのは心苦しいものがある。病人のようちゃんを目の前にして誰が残るか会議になった。
「先に行く人は、今後のプランを分かっている人がいい。逆に残る人は英語ができて病気の事が更に分かる人が残った方がいいんじゃないか!?」
「二番目に体調が悪い人が残る方がいいんじゃない?」仲間が口々に出す意見に貝のようにだまったままのオッキーとアコちゃん……。
ふたりは、ネパールで僕らと別れる予定なので、残る事もできず、気まずいんだろうなぁとオラは思った。
みんなはネパール行きに心を惹かれていた。
インドに少し疲れて、そろそろ癒しが欲しいのだ、そういう雰囲気が伝わって来る。
そんなみんなの様子を見たようちゃんは切なそうな表情を浮かべていた。
マッキーは、話がまとまらないことにイライラしたのか、「いざぽんと私が残って後の日程を調整する方がいいんじゃないか!?」とオラに言ってきた。
オラは正直、旅の日程が遅れていることもあり、先に移動して現地の情報を早く調べたいと思ったが、やはり病気のようちゃんが心配だったのと後から追い付く方が、日程を調整しやすいと思ったので、オラとマッキーがバラナシに残ることをみんなに告げた。
オラが楽しみにしていたラフティングの川の情報は、仲間に託す事にした。
みんなの出発を見送った後、宿の主人のラジャさんに近くの診療所を教えてもらった。
しかしお医者さんに別の病院を紹介された。
そしてようちゃんは、そのまま別の大きな病院で緊急入院することになったのであった。
病気になる前のようちゃんが凧を買ってきた。
しかし凧が揚がった瞬間に地元のガキんちょの凧がやって来て、ようちゃんの凧糸をプッツリ切りやがったそうな。そのままようちゃんの凧はガキんちょに奪われた。
病気で寝込んでいるようちゃんの変わりに、オラは、仲間の仇を取ることにした。
街で一番強そうな凧を二つ買ってきた。
オラは早速宿の屋上で凧揚げの練習。
風が少ないのか全然あがらない。
しかし空には他の凧がたくさん飛んでいる。
1時間後、壁に激突して凧大破。
二つ目の凧を使うが全く空には上がらない。
屋上で寝ていた宿の飼い犬のチャコや屋根の上を飛び回る野生の猿達も馬鹿にした様子でオラをチラチラ見てくる。
悔しい。
無残にも二つ目の凧は犬のチャコのおしっこにバシャッと浸かってしまった。
テンションが下がり、一気にやる気が無くなった。
その後17時頃帰宅したらなんか体の調子がおかしい。
息苦しくて熱っぽい、喉も痛いし……。
とりあえず早めの睡眠を取る。20時、夕食に行くというアコちゃん達に起こされ目が覚める。
完全に熱っぽい。
熱を測る。
38.5℃
大変だ~!!!!
とりあえず仲間に薬をもらって飲んでみたらだんだん熱が引いて楽になってきた。
これで安心と思って寝たが、ここからが大変だった。
深夜2時、暑さと腹痛で目が覚める。体温を測るとまた39℃まで上がっている。
しかもトイレに行くとひどい下痢や。
それから朝まで30分置きにトイレへ。
こんなんじゃ翌朝出発のネパール行きのバスになんか乗れたものじゃない。
オレだけネパール行き諦めてここバラナシで休養してコルカタでみんなと合流しようか……。
でもそうなるとネパールで帰国するアコちゃんとネパールに残留するオッキーとは今日でお別れ?
それもイヤや……。
そんなことまで考えてしまう。
ネパール出発の朝が来た。
下痢止まらず…。熱下がらず…。
出発の時間が来た。
みんなに、『オレ、今日のバス移動ムリだわ……。みんなは先にネパール行ってください』って伝えると『ようちゃん一人を置いていくのはみんなも心配や。
誰かひとり付き添いで残すから後から追い付いてくればイイ』って口々にそう言ってくれる。
嬉しいけど、今日のネパール国境越えバスのお金600ルピーはキャンセルしたら返って来ないわけだしオレのために誰かの大切な時間を奪っていいのかすごく悩んだ……。
結局、リーダーのいざぽんと看護師のマッキーが付き添いで残ってくれることになった。
実際、体調を崩したときに一緒にいてくれる人がいると心強い。
イザポン&マッキーありがとう。
昼過ぎに、泊まっているゲストハウスのオーナー(ラジャ)の紹介で小さな診療所へ。
簡単な診察をした後『今日と明日入院だね』と伝えられる。
え~っ、入院!!そんな大袈裟な。
診療所からオートリクシャーに乗り街の病院へ。
「はい、ここがあなたの部屋ね! とりあえず寝ててくださーい」
その後2本の点滴と大きな錠剤を3種類飲むように言われ服用する。
翌日……。
昨日と同じく2本の点滴と薬を服用する。
ドクターがもう1泊するか今日帰りたいか聞いてきた。下痢も止まったし、熱も下がったしもちろん早く帰りたいに決まっている!
今日帰ると伝えた。
何時に帰れる? と聞くがなかなか答えてくれない、なぜだ?
12時過ぎて、いざぽん&マッキーがお見舞いに来てくれた!
ワーイ!そのついでに「早く退院させてくれ」とお願いすると、案外とすんなりOKが出た。
早速荷物を持って退院成功!!
しかも体は超元気! みんな心配かけてごめんなさい。
そして、いろいろ気遣ってくれてありがとう。