目次
至難の中国(鉄道チケットをGETせよ)の巻
北京に着いた日の翌日、僕らは、早朝から動くことにした。昨日の疲れでホントは宿でのんびりしたいところだが、僕らの旅はタイやインドで合流するメンバーに合わせて移動していかなければならなかった。
仲間の旅のルールその(1)合流について
(旅に参加するメンバーは、合流・解散OKである。しかし合流する場所と日にちは事前にお互いに決めておく必要があった。僕らはその予定に合わせて旅を続けていかなければならない)
朝一でホテルの延泊手続きをし、貴重品以外の荷物は宿に置いていくことに。ぶっ飛び男の菊ちゃんは、お金(元)が手に入ったら別の宿を探すみたいで、バックパックを担いで僕らと一緒にホテルを出発することにした。
さて今日の任務は、
(1)昨日下ろせなかった中国のお金(元)を手に入れること
(2)西安行きの鉄道チケットをゲットすること
(3)日本から来るこだまちんとの合流
こだまちんは、僕らの旅に興味を持ち、「世界一周飲み会」にも参加してくれたサークル仲間の女の子だ。
北京だけでも一緒に参加したいと、わざわざ仕事を休んで僕らに会いに来てくれることになった。
オラは、こだまちんを空港まで迎えに行こうと思っていた。しかし他のメンバーが、みんな自立してもらわないとダメだから自力で来て貰おうよ、と言いだした。
仕方無しにオラはこだまちんに直接ホテルに来てもらおうと国際携帯電話でメールを打とうとした。ホテル名『丘阳大厦』に直接来て下さい……。
「あかん、漢字が出てこうへん……」
慎重派女のマッキーが、あきれた表情でこちらを見てきた。
「あたりまえやん、中国語の漢字なんか携帯の辞書で出てくるわけないやん!!」
「そっか……」結局オラは北京駅に来て貰うようメールを打ったのであった。
まず僕らは、ホテル近くの食堂に朝食をとりに行った。昨日の夕食屋の隣にあった小さな食堂である。
そして小籠包とペットボトルの緑茶を頼んだ。小籠包は日本の肉まんよりも小ぶりだが、肉の量が多くとてもジューシー。
しかし、お茶を飲んでみんなは、ウッと唸った。メチャメチャ甘いのである。見た目は日本の緑茶とほとんど変らぬパッケージだが、中国では砂糖入りと砂糖無しがあり、砂糖入りが主流なのだ。
食事を済ませた後は、『丘阳大厦』前の起公口バス停から約20分バスに揺られ、まずは前門バスターミナル前の天安門広場に行ってみた。さすがに国慶節(祝日)という事もあり、天安門広場はたくさんの中国人で賑わっていた。
僕らは天安門広場を観光し、そこから北京駅まで約2キロの道のりを歩いて行くことに。途中銀行があったので、そこでみんなは(元)に換金。これでしばらくは、生きていけるだろう。天安門から大通りの道沿いを歩けば北京駅に行けるので僕らはその側道をひたすら歩く。通りにはところどころで、スイカの切り売りや、甘栗屋、パンをぎゅっと絞ったような食べ物屋、中国らしいおもちゃを売っている露店など色んなお店が連なっている。みんなは興味津々でキョロキョロしながら歩いていた。
しばらくすると、大きな建物が目の前に現れた。建物の屋根の上には鐘楼の時計台がいくつも建築されており、時計の針が15時を指した瞬間、鐘楼の鐘が一斉に鳴り響いた。どうやら北京駅に到着したようである。
ちょうどその時、サークル仲間のこだまちんからオラの携帯電話に連絡があり、今から空港を出て北京駅に向かうと言ってきた。
その間に僕らは西安行きの鉄道チケットを購入することにした。しかし北京駅はかなり広いのでチケット売り場を探すのが大変。外国人専用チケット売り場があるはずなのだがどこを探しても全然見当たらない、駅員さんに聞いても皆いい加減な返事ばかりで、全然チケット売り場にたどり着かない。僕らの言っている意味が伝わらないのか、それとも外国人専用チケット売り場は存在しないのか? 駅の構内が広すぎたため、チケット売り場を探すのに2時間以上掛かってしまった。
後で解ったのだが、外国人専用チケット売り場は休日のため、窓口を閉じていたのだ。結局普通の一般チケット売場に行き、筆談交渉で何とか7名分のチケットをゲットできたのであった。
僕らがチケットを買っている間にぶっ飛び男の菊ちゃんは、自分の宿を探しに出かけた。
しばらくするとオラの携帯電話に再びこだまちんからの連絡が入った。どうやら駅近くの郵便局から電話している様だ。北京駅にはケンタッキーフライドチキンの店があるので、そこに来るよう伝えた。そしてこだまちんとも無事合流成功!
しかしこだまちんはうゎんうゎん泣いていた。
「どうしたん、こだまちん?……」
「いざぽんひどい~、空港まで迎えに来てくれるって言ってたのに~」オラの肩をパンパン叩いてきた。
「そうかごめん、急に予定が変更になってん。でもちゃんとひとりでこれたし良かったやん」オラは申し訳なさそうに答えた。
「ここまでくるの大変やってんで~。だって中国人ひどいんやもん。郵便局で電話が繋がらないって言ったら、怒って払った電話代のお釣りを投げつけてきたんやで!!」
初めての中国旅行で、ひとりでここまで来るのはすごい心細かったんやなぁ。よしよし。
しばらくしてぶっ飛び男の菊ちゃんが自分の宿交渉から帰って来た。やはり連休で値段の安いドミトリーの部屋は空いて無かったようだ。ということでまたまた僕らと同じ宿に泊まる事になった。
しかも菊ちゃんは僕らと離れている間に、ベンチに置いていた自分の中国のガイドブックを、中国人に落ちているものだと勘違いされ、拾われ持っていかれたんだと言う。そんなこともあり、しばらくは、僕らと旅を共にすることに決まった。菊ちゃんも西安行きのチケットを無事購入することができた。
もう辺りも暗くなってきたし、今日はみんなよく頑張ったので、リッチに北京ダックを食べに行こう♪ 僕らはいったん前門バスターミナルまで歩いて戻った。夜になると天安門広場のお城のまわりの電球が灯り、お洒落にライトアップされていた。人通りもどんどん増えてくる。メンバー9名が離れ離れにならないように、お互いの肩をしっかり握り、まるでムカデの様に、人混みの中をクネクネとかき分け歩いた。
前門大街通りを南に数百メートル歩いたところで、大行列の北京ダックの店を発見した。看板には『全聚徳』と書いてある。こんなに並んでいるならきっと美味しいに違いない。僕らはその列に並ぶことにした。
30分ほどでテーブルまでたどり着いたので、並んでいる人の数のわりに、待ち時間は短いなと感じた。席に着くとまずは生ビールで本日の任務の完了を祝い乾杯した。そしてテーブルにメインの北京ダックの切り身が運ばれてきた。さすが、本場の北京ダックは肉厚もあり、安くてうまい!「好喰(ハウチー)(美味しい)!」これで1人前70元(1050円)。
しかし、連休ということもあり、お店の外も中もテーブルの空きを待つ人で大混雑。僕らのテーブルのまわりにもお腹を空かした中国人達がいっぱい。僕らの食べている様子を目の前でまじまじと眺めている。
「おい、店員! お客待たすなら店の入り口で待たせろよ! ほんま、落ち着いて食べられへんわぁ……」
待ち時間が意外に短く感じたのは、「早く食べろよ!!」という順番待ちのお客のプレッシャーを感じされるためのお店側の戦略なのかとオラは思った。
この二日間の経験で北京は僕らが思った以上に英語が通じない事を実感、色々苦労する事が多かったので、ホテルに戻ってからは、今後のためにも毎晩ミーティングする事を決めた。今回はお金の使い方と役割分担について話し合った。
仲間の旅のルールその(2) お金の支払いについて
まず基本はみんなそれぞれ個々で支払いするが、宿代や食事代はまとめて払うので共通財布を作る事にした。管理者は毎日当番制で財布とお小遣い帳を渡される。大きいお金が動きそうな時は前もってお金をみんなから徴収しておく。食事の時にお酒を飲む人はその分、別途徴収。
仲間の旅のルールその(3) 役割分担について
「交渉はいつも同じ人しか動かない、これでは駄目だ。みんなの旅だし、全員が順番に交渉していくようにしなければいけない」こういう意見が出てきた。
たしかに旅の交渉は英語の得意な人間か、学生時代中国語を少しでも勉強していたメンバーが中心になっていた。一生懸命交渉に動いていたので、そう言いたくなるのはすごく分かるのだが……
「まぁ、まぁ、旅も始まったばかりやしさぁ、交渉も苦手な人もいることやし、まずは、交渉がうまい人に慣れてない人が付き添ってちょっとずつみんなが交渉できるようになっていけばいいんちゃうの?」オラは軽く流すような言い方をした。理由は外国語の苦手なメンバーや引っ込み思案のメンバーもいる。目立たないところで一生懸命動いているのも知っていた。一部のメンバーからのとげのある言い方に不満を抱いている仲間がいるのも分かっていたからである。
それよりオラは、仲間での旅に早くもギクシャクが出てくるのじゃないかと心配になった。一緒に旅するメンバーが、一人一人の性格をお互い理解していかないとこの旅はうまくいかないと思った。
公衆トイレだというのにお金が必要だ。値段は5角(1元の半額)、きっと綺麗なトイレなんだろう。
しかしなんと中国の公衆トイレは壁も何も無く、だだっ広いフロアーに四角い穴が開いていているだけの汚い空間だった。そこで隣に座った人と会話を楽しみながらうんちをするのである。
中国人「へい! どこから来たんだい?」
オラ「日本から来ました。しかし会話しながらうんちするのって何か、へんな感じですね?」
中国人「何を言っているんだい、中国人のコミュニケーションの場はトイレの中なんだぜ!」…… ブリ
オラ「そっか、そーいや日本では銭湯に行ったら男同士、裸の付き合いって言うもんね!」……ブリブリッ
オラ「うっ、お腹が痛い」…… ブリブリブリシャー
中国人「おいお前、大丈夫か?……」
……てな具合にコミュニケーションを取れる楽しい場所であった(汗)。
【軟臥・硬臥(寝台車)】・【軟座・硬座(座席)】
1ヶ月前に先に中国に渡った博士タイプのぷる君とは、タイのバンコクで合流予定である。そのぷる君の中国の情報では、彼は間違って硬座のチケットを買ってしまい、かなりしんどい目にあったという。
僕らは軟臥か硬臥の寝台のチケットをなんとか手に入れたいものである。
通常主要の駅には外国人専用チケット売り場が存在する。休日で外国人専用チケット売り場の窓口が閉まっている時は、一般チケット売り場で購入。
北京から西安までの14時間の寝台車(軟臥)チケット一人208元(3120円)
やはり中国は漢字を組み合わせ、紙に書いて見せるのが一番伝わりやすいと思った。
初めての海外旅行で、僕らに会うため一人で北京駅までやってきたサークル仲間のこだまちん。北京駅前の郵便局内で偶然公衆電話を発見し、僕らに電話をかけようとした。
ところが、電話がうまくかけられなくて、窓口のお姉さんに助けを求めようとする彼女。しかしせっかちな中国人が、優しく対応してくれるはずもなく、逆にイライラされ、挙句の果てに公衆電話代のお釣りを投げつけられ、精神的にくじけてしまうこだまちんであった。