極寒の地イエローナイフの巻
カルガリーから飛行機で約2時間、この旅の最終目標の地である、イエローナイフに到着した。
気温はマイナス30度、吐く息も凍るような寒さである。
なのに、ここイエローナイフ空港では、飛行機を降りた乗客を、なぜか全員滑走路を歩かせるのだ。
「寒いちゅうね~ん!!」
鼻で息を吸えばピキピキっと鼻毛も凍るような寒さを僕らは体感したのであった。
空港のロビーではオーロラツアーのスタッフが待機しており、特別仕様の防寒具を貸してくれた。
これだけ寒くなると普通の防寒具では対処できないのである。
早速防寒具に着替えると、スタッフが僕らの泊まるロッジに案内してくれた。
ロッジの主人はイヌイット(現地民)だそうだ。
そして現在実家までスノーモービルを使って帰っているらしい。
実家へ帰るのに2泊3日もかかるそうだが、もう10日以上経つというのに、いまだ実家から到着の連絡が無いらしい??? 果たして主人は大丈夫なのだろうか!?……。
奥さんはカナダ人で、一人でキャンプに行っているのだそうだ。
「すげー、こんな極寒の地でしかも一人でキャンプをするなんて、凄いアウトドア人間だなぁ」オラは奥さんに早く会ってみたくなった。
しかし、留守中のロッジの管理は、近所のおじさんがしていて、残念ながら奥さんには出会えなかった。
ロッジの玄関をすすむと、中には1メートルほどの魚が凍ったままで、床に放置していた。
近辺の湖の氷を掘れば簡単に釣れるらしい。
その他、お肉やアイスクリームも、そのまま玄関の棚に置いていた。
玄関を冷凍庫として使っているのだ。オラは、こんな玄関の使い方をしている家を見るのは生まれて初めてだった。
お昼すぎ、僕らはオーロラツアーのスタッフにアイスロードに連れて行ってもらった。
アイスロードとは1月中旬から3月中旬の間のみトラックやバスが走る事のできる全長約6キロメートルにわたる湖上の道路である。
夏場は飛行機を使って物資や人を運送しているが、重機を運ぶ事が出来ないので、この時期のみ、物資を運ぶための道が造られるのだ。
しかもこの2ヶ月で8、000台もの車が行き来するため、スピード違反も取り締まっているというから驚きだ。
それにしても何トンもある大きなトラックが、凍った湖の上を走っているというのは想像もできなかった。
ちなみに氷の分厚さは1メートル以上あるらしい。
そりゃ、ちょっとやそっとじゃ割れないんだろうなぁ……。
そんな分厚い氷の奥をよく見ると、小さな魚がそのまま氷漬けになっているのが見える。
ここでちょっと実験だ。
スタッフの兄ちゃんが湖の氷の上で大量のお湯をまき始めた。
するとピキピキと音を立て僕らのまわりの氷が割れ始めた。
僕らは地面が裂けて湖に落ちてしまうんじゃないかと一瞬ビビッてしまったが、実は、まいたお湯があまりの寒さに一瞬にして凍ってしまったのであった。オラはホッとして胸をなで下ろした。
お次は、ポットからコップにお湯をくみ、空に向かって、思いっきりまき始めた。
するとなんと!! まいたお湯が、瞬時に冷えて水蒸気に変わり、雲になって飛んでいった。
「すげー、おもしれ~」ダイタもようちゃんも大はしゃぎだ。
僕らは、宿に戻ってからも、バカの一つ覚えのように、何度も何度も玄関の前でお湯を撒き散らせて遊んでいたのであった……。