風が強くない時はケーブルカーで頂上まで上がる事が出来るが、(テーブルクロス) 山の頂上付近が雲で覆われている時は景色が全く見えないので、その日のコンデションが大事である。
頂上では、アブセールというスポーツに挑戦できる。
1000メートルの高さから下の棚までの120メートル間をロープ1本で降りていくという超デンジャラスなスポーツである。
地上1000メートルの恐怖の巻
ケープタウン滞在4日目……。
オラはケープタウン滞在中にテーブルマウンテンに登る絶好のタイミングの日を狙っていた。
テーブルマウンテンとは、頂上がナイフで切ったような平らなテーブル状の形をしている山である。
その頂上付近には大抵テーブルクロスといわれている雲がかかっている。
その雲がなく風が穏やかな時をオラは待ち望んでいた。
テーブルマウンテンの頂上から下までは1000mの切り立った崖になっている。
その1000mの高さから下の棚まで、約120m間をザイル(ロープ)1本で降りていくアブセールという、超デンジャラスなスポーツを発見してしまったからだ。
しかし、内心はびびってもいた。
1000mの高さからザイル1本で崖を降りるとなると、かなりの危険が伴うと思ったからだ。
もし急な突風でも吹いたら、壁に激突するかもしれない。
海外のアクティビティーで観光客がよく事故にあっている事も聞いた。
この国のインストラクターをどこまで信用できるのかも疑問視するところだ。
しかし、オラは一旦アドレナリンが出ると止まらないのである。
オラはそのタイミングが来た日、みんなにアブセールにチャレンジすると告げた。
するとあけちゃんが、私もやりたいと言って来た。
「え、本気で! かなり危険かもしれんで!」
そんなオラの言葉をよそに、他のみんなもやりたいと言い出した。
結局、オラ・あけちゃん・ようちゃん・菊ちゃん・マッキーがチャレンジすることになった。
しかしこの舐めた考えが、後で、仲間がとんでもない事件に巻き込まれることに……。
テーブルマウンテンの頂上は、雲ひとつない晴れ渡った空が広がり、風も無く絶好のアブセール日和であった。
崖の下にはケープタウンの町と海岸の砂浜が小さくまとまって見え、まわりには青々とした大きな海が広がっていた。オラには海の水平線が、なんとなく丸い地球の形をしているかのように見えた。
僕らは早速、アブセールに挑戦! しかし菊ちゃんは高所恐怖症。
「菊ちゃん、たまには男を見せんといけんよ!」あけちゃんが言った。
そんなムチャな! 高いところが大好きなこのオラでさえ、下を見た瞬間、足がすくんでしまうのに。
オラは高所恐怖症の菊ちゃんには絶対無理だと思った。
だが菊ちゃんは男を見せるために、アブセールに挑戦することを決意した。
やはり、愛の力は、凄い!
頂上から2本のザイルがぶら下がっていて、2人ずつ上から降りて行く事になる。
まず、トップバッターは他の観光客の外人さんとようちゃんがチャレンジ。
「ひぇ~怖え~!」ようちゃんは一瞬下を見て雄叫びを上げた。
さすがは九州男児ようちゃん、なんだかんだ言いながらもスルスルと降りていった。
お次は菊ちゃんとあけちゃんそしてマッキーとオラの順番だった。
高所恐怖症の菊ちゃんの顔はだんだん硬直していった。
菊ちゃんは「下をいっさい見ない!」と言い残すと、あけちゃんをおいてスルスルと崖の下へと降りていった。
ザイルの進み具合で何となく様子は想像できるのだが、ゆっくり動いていたあけちゃんのザイルが突然途中で止まってしまい、5分ほどザイルが動かない状態が続いた。
いったい何が起こったのか?
上にいた僕らには何がどうなったのか分からず、かなり心配になった……。
僕らと一緒に上にいたインストラクターがさすがに助けに降りようとしたその時、あけちゃんのザイルが動き出した。
何とか自力で解消できたようだ。
後で聞いた話、どうやらあけちゃんの髪の毛が金具に絡まってしまい、髪の毛が自分の体重に耐えられず、バッサリ抜けてしまったみたいだ……。
後で見てみると1センチほどハゲができていて、ホントに痛そうだった。
そしていよいよ今度は、オラとマッキーの番だ。
ザイルをつかんで岩の外側に身をあずけていく、足元は断崖絶壁。
風がヒューと一吹きした。
ほんとに足がすくんでしまいそうな高さである。
先に下で待っている菊ちゃん達の姿が蟻んこのように見えるが、それが菊ちゃんかどうかまでは確認ができるほどオラに余裕は無かった。
岩の壁をキックしながら手の力を抜いて1本のザイルを伝って下へ下へと降りていくと、そのうちにだんだんと余裕が出てきた。
上空1000mの高さを、一本のザイルだけで降りるなんて何とも言えない気分。
まわりにはライオンヘッドと言われるとがった山やケープタウンの街並みがオラの足元でくっきり見えるのが凄いと思った。
しかし、いきなりオーバーハング(壁が凹んでいる状態)の岩を降りた瞬間、今までの余裕感が無くなった。
「怖え~」さすがのオラもこれにはビビッた。
ここからは宙ぶらりん状態で下まで降りるのである。
マッキーが自分の足元を見ながら不安そうにオラに言った。
「なんか、ロープの下の方がダンゴになってるのが見えるで。」
「うそー! オラには見えへんけどなぁ。ちょっとブレーキ掛けーや!!」
「無理!! 手の力がはいらへんからどんどん下に下っていくねん」
「まぁ、虫かなんか付いてるんちゃう? 大丈夫やろ」オラはまさかそんなところで結び目ができるなんて思っていなかった。
しかし、近くで見るとそれが、虫ではなく本当にザイルの結び目であることに気づいたが、時すでに遅し!
マッキーは、ダンゴ状に結ばれたザイルに引っ掛かってしまった。
マッキーは標高約1000メートルの高さで宙釣り状態になった。
彼女の額からは冷や汗が流れ、顔面蒼白になっていた。
オラは、急いで下に降り、この緊急事態を下にいるスタッフに伝えに行った。
しかし、そのスタッフは、ただの手伝いの素人なのか、そこから50m以上の高さで宙ぶらりんになっているマッキーのザイルをブルンブルン振り始めた。
「だめだめ、そんな揺らしちゃ! 上のインストラクターに早く連絡して!?」
しばらくして、白人のスタッフが上から降りてくるのが見えた。
しかし、マッキーの横を通り過ぎていった。
どうやら様子を見に来ただけのようだ!
しかも、その白人のインストラクターは慌てたのか、素手で降りてきて摩擦熱で手が熱かったのか、マッキーの軍手を奪って下まで降りてきた。
やはりここのスタッフは当てにならないなぁ。
その時すでに1時間を経過していた。
しばらくすると別の黒人のインストラクターが降りてきた。
今度はちゃんとレスキューしてもらっているようだ。
「もし失敗したらマッキーが落ちてくるじゃないの!?」菊ちゃんが心配そうに言った。
下で待っている僕らは心配でただ見守るだけであったが、何とか無事ダンゴになった結び目の下に移動できたようだ。
アブセールは通常5分もあれば下降できる時間であるが、マッキーの場合は結局、1時間以上宙釣り状態であった。しかし、アブセールのインストラクターの決死の救出によって無事地上に降りる事ができたのであった。
また南アフリカには乗合タクシーのようなミニバスも走っている。
みんなでテーブルマウンテンのロープウェイ乗り場に行くために宿のレセプション(応接室)でタクシー2台を呼んでもらうよう頼んだ。
宿の管理人のジョンはいつもノリノリ「君達6人だからビッグタクシー(ワゴン車)を呼んであげるぜぃ、イェイ!」
僕らもノリノリに答えた「サンキュー、ジョン! エンジョイしてくるぜぃ、イェイ!」
ようちゃん「多分ジョンはビッグタクシーっていっていたけど、普通のタクシーが来ると思うな」
「なんで?」
「だってここの国の人間は、いつもいい加減やもん!」
そして5分後、一台のタクシーがやって来た。
はい、ピンポーン!
予想どおり、普通のちっちゃいタクシーであった(汗)。
まぁ、二台より料金が安くなるからいいか!
僕らは、いつものように、助手席に二人、後ろに四人乗って、いざテーブルマウンテンへ!
車の中から、臭いニオイがして来た……。
「オイ、兄ちゃん、クラッチ焼けてるん違うんけー!!」
この辺りは坂が多いのと、車の定員オーバーのせいで、坂道発進が、うまくいかないみたいだ。
オイ、大丈夫かよ! オラはいつ、クラッチが焼けて車が止まってしまうのか、ヒヤヒヤした。
しかしなんとか、ロープウェイの下までたどり着くことができたのであった。
景色がとてもきれいに見えた。
そこで、ロッククライミングの逆バージョンみたいな、
ロープを伝って下にただ下りるだけのアクティビティーに参加した。
岩しか見えないし、岩は垂直だし、怖いけど
せっかくの経験だし……。
晴れているテーブルマウンテンは珍しいし……。
何よりみんながするのに私だけしないのは悔しいので
急遽参加した。
あんまり技術は関係なく、ロープで降りるだけなのに、トラブル発生。
私の降りるロープが途中で絡まり、宙ぶらりん。
何に焦ったって、実は心配させないようにと、親には南アフリカにいるのではなくインドにいることにしているのだ。
今思うとインドの方がやばかったケド……。
しかも、前日親と電話して
「危ないこと絶対しちゃアカンで」と言われたのに……。
【宙ぶらりん中空想】
私の家の食卓にて
ニュース「昨日、ケープタウンのテーブルマウンテンで日本人女性が宙吊りになりました」
両親「あのこ、あんなとこおるで!」
イカン、目立ってはだめだっ!
なんとか宙吊り1時間後に無事に生還。
てか、なぜ1時間もかかるのか信じられない。
まずいざぽんに下っている時に
「ねー私のロープ絡んでるんじゃない?途中止まらへん?」と聞くと
「大丈夫、すり抜けるやろ」
ってすり抜けるわけ無い!
いざぽん沢登りとかでロープやカラビナ使うんちゃうんけ!!
下で待っているアシスタントの兄ちゃんは振ってロープの絡みを解こうと……。
解けるわけねーじゃん!
「今度振ったら靴落とす! とそのにーちゃんに言って(激怒)」といざぽんに八つ当たり。
で、上からレスキューが来たかと思えば、
様子だけ見て下りてった。
見るだけかぃ!
いえ、私のグローブを奪っただけで下りていってしまった。
やっとアーネスト・ホーストみたいな人が来て助けてくれた。
けど、親に心配ばっかかけさせちゃだめだね。
ってことで、日本にも無事に生還しないかん! と実感した1時間でした。