オカマちゃんの恐怖の巻
みんなで泥風呂温泉を楽しんだ後、オラ・ようちゃん・菊ちゃん・あけちゃんの4人でニャチャンのクラブに遊びに行くことになった。
クラブの中は学校の教室くらいの広さで、一番正面に踊るフロアーがあり、そのまわりに無造作に並べられた立ち飲みのテーブルがあった。
ここのクラブは入場料は無料で、ワンドリンク制の店だった。
僕らは一番安いビールを頼んだ。
タイガービール2万ドン。
定価の2倍ぐらいだ。
しかし、何故か、24000ドンを請求された。
チャージの料金かと聞いてみると違うみたい。
どうもこの国では、オシボリを使うとお金を取られるみたいだ。
4千ドンっていったら、宿の近くのお店でオラのお気に入りアイスが4個も買えるのに……。
僕らはフロアーに踊りに行った。しばらく4人で踊っていたが、オラと菊ちゃんは少し疲れたのでテーブルに戻り、再びビールを飲んでいた。
しばらくテーブルで休んでいると、格好はB’zの稲葉のようだが、顔や仕草は藤井隆のようなおかまの兄ちゃんが、腰をクネクネしながらオラと菊ちゃんの隣に割り込んできた。
「ねぇ、あなた達、踊らないの? 一緒にフィーバーしましょうよ!」菊ちゃんの耳を舐めるかのように話しかけている。
おかまの兄ちゃんは音楽に合わせ、腰を振りフリしながらオラの身体にお尻を擦り続けてきた。
きゃー、気持ち悪い!
「あなた~、何処から来たの~、かわいいわねぇ~」
今度は、オラの耳に息を吹きつけてきた。
オラは狼に追い込まれた子羊の様に無抵抗におびえた。
オカマちゃんは更に、オラと菊ちゃんの乳首を片方ずつ摘んでモミモミし始めた。
オカマちゃんの指は微妙にオラの乳首から外れていたので、なんとなく助かった気分……。
しかし、菊ちゃんは何と、無謀にもオカマちゃんの乳首をモミ返しているではないか!
なんて事をしてくれたんだ、オカマちゃんが興奮してエスカレートしてきたらどうするんだ! が、時すでに遅し……。
オカマちゃんの手は、菊ちゃんの乳首からどんどん下がっていって、とうとう大事な部分をモミ始めた。
ぐにゃ、ぐにゃ、ぐにゃ、ぐにゃ、ぐにゃ。
菊ちゃん、モミモミされているよ~!
うわぁ、今度はオラの方の手も徐々に下がってきたよ~!それだけは勘弁してくだせ~。
しかし、幸運にもオラの大事な部分の上はウエストポーチでブロックされていたので、オカマちゃんのゴールドフィンガーも侵入して来れなかったようだ。
オラは何とか自分の身が汚れずに済んだので良かった。
翌日、ニャチャンに1泊した僕らは、ベトナム最後の目的地ホーチンミンに向かった。
僕らの乗ったバスはニャチャンを20時に出発して、予定時刻の1時間半遅れでホーチンミンに到着した。
到着時刻6時半。
まぁ、あまり早く起こされるのも嫌だったので、ちょうどよかったのかもしれない……。
僕らはファングーラオ通りから少し路地を入った場所にある『イエローハウスホテル』一人1泊3.5米ドルの宿に宿泊することにした。
ホーチンミンは観光に使う日程もあまり必要としなかったので翌日の朝には、カンボジアに向け出発することに決めた。
ホーチンミンはベトナムの中ではかなり都会。
そんな都になると、みんなのしたいことややりたいことがそれぞれ違ってくるので、今日一日自由行動の時間にした。
オラは、歯磨き粉や石鹸などそろそろ買い足さないといけない物が増えたため、スーパーを探したり、日本に荷物を送るため、郵便局を探したりしながら街を歩き回った。
途中お洒落なオープンカフェを発見。
凄く美味しそうなパフェの写真が店頭に飾られていたので思わず中に入ってしまった。
この先しばらくは、こんな美味しそうなデザートにはなかなかありつけ無いだろうと思い。
贅沢にプリンやパフェなど数種類のデザートを一人で食べてしまった。
しかしアコちゃんは、更にオラよりも上手だった。
昼間に彼女も同じ店に入ったらしく、その店で一番大きなパフェを二つも食べていたというのだ。
オラが夕方、宿に戻ると更になんと、南国のフルーツをどっさりと持ち帰っていたのである。
「さぁ、みんなで食べよう♪」
アコちゃんは、大喜びで買ってきたフルーツを上手に切り分け、みんなに振る舞いだした。
アコちゃんのデザート好きにはさすがのオラも頭が上がらないのであった。
そんなベトナム最後の夜、菊ちゃんはそろそろ国も変わるので、自分の髪の毛をオシャレにカットして欲しいと言ってきた。
オラは「菊ちゃんの行きたい方向を目指して歩くんだ」という意味も込めて、髪を矢印の型にデザインしてあげた。
菊ちゃんは、オラがカットした髪型をどうやら大変気にいったらしく、外に飲みに行こうと言ってきた。
そういう訳でオラと菊ちゃんとようちゃんの3人で飲みに行く事になった。
お店の外に、テーブルが無造作に並べてあるオシャレなBarがあった。
こういったBarには、必ずといっていいほど観光目的の欧米人達が集まるので、お店の中はいっぱいである。
僕らはお店の外にある、空いていたテーブルに腰を降ろした。
そしてタイガービールを1本ずつ頼んだ。
ビールを飲んでいると菊ちゃんの顔をさっきからずっと眺めてる外人がいた。
またオカマちゃんかと思ったが、いや違う。どうやら菊ちゃんの似顔絵を描いている。
絵描きさんのようだ。
かなり上手で、しかも本人よりも男前。
近くで飲んでいた欧米人の女性が、本人以上にカッコイイ菊ちゃんの絵を見て、私も描いてほしいと言ってきた。絵描きさんは、欧米人には5米ドルを請求していた。
菊ちゃんが、周りの外国人にも自分の似顔絵を見せてまわると、「オレも!」「私も!」と、その絵描きさんは大繁盛になった。
菊ちゃんが「僕は幾ら払えばいいの?」と聞くと、絵描きさんは菊ちゃんの言い値でいいと言ってくれた。菊ちゃんはその絵描きさんに2米ドルを払った。
さすが、オラのデザインした菊ちゃんの頭の矢印が、絵描きさんの創作意欲をかきたてることになったのだと、オラは自画自賛するのであった。

アコちゃんにカットされ、上機嫌になったモヒカンヘアーの菊ちゃん

菊ちゃんの似顔絵
オラは郵便局に行く途中で、バイクタクシーの兄ちゃんに声をかけられた。
「こんにちは、私のバイクで観光しませんか?」
バイクタクシーの兄ちゃんは自分が怪しくないことをやたらアピールし、日本のギャグも連発していた。
オラは逆に怪しく感じた。
「これは日本の観光客が私に書いてくれた手紙よ!」
バイクタクシーの兄ちゃんはいかにもわざとらしく、手帳に貼ってある手紙を見せてきた。
「私はベトナム5回目だけど5回とも○○さんに観光を頼みました。毎回とっても親切にしてくれて、すごく楽しい時間を過ごさせてもらいました。
次来る時も○○さんに観光を頼む予定です……」
オラはガイドブックに書いてあった『こんな外国人には気を付けよう!ベスト3』を思い出した。
1.日本語でしゃべりかけて来る外国人
2.日本のギャグを連発してくる外国人
3.日本人が書いたと思われる手紙を見せてくる外国人
さすがにオラはそのバイクタクシーで郵便局に行く自信は無かった。
宿に帰ってみんなに聞いてみると、全員声をかけられたみたいだ。

いかにも怪しそうなバイクタクシーの兄ちゃん