憧れの島ザンジバル島への巻
翌朝起きると、ザーッという音が外から聞こえてくる。
窓の外は、この旅始まって以来の大雨が降っていた。
しかも雷も鳴っている。
船が欠航しないか心配だったが何とか出航できるみたいだ。
宿から港までは歩いて行ける距離だけど雨があまりにも酷いのでタクシーを使うことにした。
めぐみちゃんは、パスポートの再発行の手続きをするために、今日中に、日本大使館に行かなくてはならなかった。
なぜなら明日から正月休みに入ってしまうからだ。
彼女はザンジバル島を諦め、宿でみんなをお見送りすることとなった。
ザンジバル島行きの船(一人片道45500シリング=約4459円)は時化た海に向かって出航した。
船の客室の荷物が右や左に床を滑り出すくらい船は揺れていた。
そして約二時間でザンジバル島に到着した。
甲板に出ると雨はすっかり止んでいた。
ザンジバル島はタンザニアの小さな島だが、昔別国だった名残なのか、なぜか税関があり、パスポートにスタンプを押してもらい島に入るのであった。
港近くにある前もって予約していたマリンディ・ロッジ(一人1泊7500シリング=約735円)の宿に荷物を置くと、僕らはさっそく街を探索する事に……。
今日は天気が悪いので海で泳ぐのはもったいないなぁ。
しかし、ザンジバル島は、島の街並みが世界遺産に登録されているので、小さな街をうろちょろするだけでも楽しくなる。
特に僕らの泊まったストーンタウンは、昔の支配層であるヨーロッパとアラブ双方からの影響を受け、3階建て以上の石造建築物が連なっていて、その街並みはこの島独特の雰囲気をかもしだしていた。
オラが街の路地裏を歩いていると、店番をしているマサイ族の兄ちゃんに英語で声を掛けられた。
「君達、マサイ族のグッズには興味ある?」
うわ、マサイ族に声かけられた! オラは、はじめて見るマサイ族に、感動してしまった。
「でもマサイ族はケニアでしょ? なんで、こんな離れた島に来てんの?」
どうやら隣国のケニアでは、たくさんのマサイ族が住んでいるらしい。
各国でマサイ族ブームが起こった時に、観光客目当てに商売する仲間が増えたようだ。
だから競争率が激しいため、遠くまで出稼ぎにきているのだ。
「そうなんや、マサイ族もたいへんやね!」
マサイの兄ちゃんは、安くしとくから何か買っていけと言う。
「う~ん、でもケニアに行った方が、安くて色んな種類が選べそうだから今日は辞めとくわ!」
そう言うとオラはマサイの兄ちゃんに手を振り、その場を歩き出した。
オラは浜辺の方にも行ってみる事にした。
浜辺の公園には、夕方になると屋台がずらりと並ぶ。
お肉やとうもろこしの他、魚やカニやオマール海老など海鮮物を串にさして、その場で焼いて渡してくれる。
安くて美味しい物が多いのでかなり満足できた。
僕らは次の日、パジェのビーチに行く計画を立てていた。パジェビーチは、旅人の情報によるとかなり綺麗らしいので行く価値はあると聞いたからだ。
しかし、僕らは一泊しかザンジバル島にいないので帰りの船の時間も考えなくてはならない。
調べてみると、船の出発時間は13時。
それまでに帰ってこないとダメであった。
セルビス(ワゴン車)の運転手に聞いてみると、ストーンタウンからパジェまでは1時間以上掛かるという。
人数が多い分上手く交渉すれば運賃は安くなるみたいだが、パジェにいる時間はどう計算しても1時間くらいしかなかった。
夜、宿に戻ってミーティングをした結果。
みんなビーチは楽しみにしていたが、一時間ではあまりにも少ないという。
多数決の結果、パジェ行きは諦める事にした。
仕方がないのでオラ・ようちゃん・ぷる君は、釣りに行く計画を立てた。
明日の朝一、港の漁師に交渉しに行こう。僕らは道具も何も持っていないが、直接漁師に交渉すれば何とかなると思った。
そして漁師は朝が早いと予測し、僕らは、翌朝4時に起きることに決めた。
そして他のメンバーは、各自で明日の計画を立て寝ることにした。