ベトナムの古都フエの巻
ハノイに5日間滞在した僕らは、オープンツアーの夜行バスに乗って15時間かけ、次の目的地フエに向かった。
中国での夜行列車の移動に慣れてしまったオラは、どうもベトナムでのバスの座席は窮屈で寝られなかった。
ここはいったいどこを走っているのだろう。
ぼんやりと車窓の外を眺めるが、果てしなく続く暗闇の世界だけであった。
夜が明けた頃にはどんな景色が見えるのだろうか……。
しかしこうして旅を続けている自分は、凄いなぁと改めて思ってしまった。
つい2~3年前までは、自分が世界を旅しているなんて全く想像もしていなかったからだ。
中国という広い土地から国境を越え、今はベトナムを縦断しようとしている。
この毎日のドキドキ感とワクワク感がたまらない。
こうして旅しているうちにどんどん自分の視野が広がっていくのを感じる。
世界一周をやり終えた自分は、どう変わっているのだろう?
みんなもどう成長していくのだろうか?
想像するだけでもワクワクする。
みんなはどんな感覚でこの旅をしているのだろう……。
オラはふとみんなの方を振り返った。
あけちゃんも真剣な眼差しで窓の外を見つめていた。
彼女もきっとこれから始まる旅への期待を思い描いているのだろう……。
しかしよく見るとあけちゃんは、体を震わせながら、両手でお腹をぐっと押さえている。
どうやらお腹の調子が悪いようだ。大丈夫であろうか……。
突然あけちゃんが自分の座席からバスの運転席の方にフラフラと歩いて行った。
どうやらお腹の痛みが我慢できなくなった様だ。
バスは適当な場所に止まり、あけちゃんが暗闇の中に走って行った。
5分ほどして車内に戻ってきたあけちゃんに声をかけると、「うん。もう大丈夫」あけちゃんは穏やかな表情で答えてくれた。
安心して、胸を撫で下ろしていたら、オラはいつの間にか眠っていた……。
朝の9時フエに到着。まずは、ガイドブックで調べていたテレビ塔近くのホテルに行ってみるが、安い部屋は空いてなく、仕方が無いので隣のホテルを訪ねてみた。
運よく安い部屋が空いていたので2部屋に別れて泊まることになった。
『タイビンホテル』一人1泊2.5米ドル。荷物を置いて、宿から2キロほど離れた場所にある世界遺産の王宮を目ざし歩き出した。
宿のすぐ前には、服屋さんが並んでおり、女性メンバー達はベトナムの民族衣装の“アオザイ”に夢中。
「マッキー、この衣装可愛くない!?」
あけちゃんが、青色に可愛い刺繍をほどこしてある長袖のチャイナドレスの様な衣装を取り出した。
「いいやん試着してみたら!?」 マッキーが言った。
「私はこれ着てみよっかなぁ」 アコちゃんも違う衣装を取り出す。
男性メンバーは退屈そうに外で待っている。
そのうち近くの雑貨屋を菊ちゃんが発見! 今度は男性メンバーがベトナム戦争時代の勲章やペンダントに夢中になり、今度は女性メンバーが待つ羽目に、こんな感じでなかなか目的地にはたどり着けないのであった。
川幅300メートルほどの大きなフォーン川をまたいでいるチャンティエン橋を渡れば王宮のある城内はもう直ぐだ。
チャンティエン橋は、夜になると七色にライトアップされるらしい。
僕らはその橋を歩いた。
川の上流からドラゴンの形のボートが橋の下を通り過ぎようとしている。
僕らの真下付近を通ると船頭さんが「乗っていけよ!」と声をかけてきた。
僕らは手を振って「機会があったらね!」と答える。
橋を渡ると歩道に陶器や昔の古いコイン・戦時中のヘルメット・勲章などを並べた露店があり、またまた菊ちゃんとようちゃんの足が止った。
しばらくすると蓮の葉で埋め尽くされたお堀が出てきた。その前の道を通ると、いつの間にか城内に入っていた。
まずトゥア・ティエン・フエ省博物館という建物を見つけたが、定休日だったのか館内には入れず、辺りはガラーンとしていた。
庭には米軍のミサイルや戦車、ロシア製の戦闘機なども並んでいた。まわりに人がいないのをいいことに、僕らは戦車に乗って遊んだ。
敷地があまりに広いので僕らは何をどう回ればいいのか迷っていた。
しばらくすると地元のおじさんらしき人を発見。
菊ちゃんが王宮の場所を訊くと親切に教えてくれた。
菊ちゃんが「お礼にタバコでも……」と言うとおじさんは一瞬二カっとした笑顔になり、菊ちゃんが渡したタバコをくわえた。
そしておじさんの教えてくれた方向に歩いていくと、僕らが目指していたグエン朝の王宮を発見した。
王宮の前の広場にはベトナムを象徴する大きな旗がパタパタと風になびいていた。
さすがにこの辺りには観光客もまばらに集まっていた。
しかし僕らは、どうやら城内が全体的に休みの時に来てしまったようで、人の活気も少なく物足りなさを感じた。
それでも僕らはせっかく来た世界遺産なので写真だけは記念に撮って帰ろうと思った。
ふとオッキーを見ると世界遺産の王宮を色んな角度から一生懸命、携帯カメラで撮影していた。
その姿を見たあけちゃんが、オッキーを不憫に思い「私、ホーチンミンに着いたら新しいデジカメを買おうと思ってるんだ。
そしたらオッキーに私のデジカメかしてあげるよ!?」と言っていた。
やっぱりあけちゃんは、仲間思いで優しいなぁとオラは思った。
王宮の帰り道、僕らは小学校の校舎の前を通った。生徒たちの元気な声が聞こえてくる。
僕らはその声に吸い寄せられるように歩いていくと、校門の前の広場で、20人くらいのベトナムの子ども達が元気いっぱい遊んでいた。
「シンチャオ!!(こんにちは)」僕らが大きな声で叫ぶと、校門越しにちびっ子のみんなが集まってきた。
「カムオンニュー(ありがとう)」
「バオニュー?(いくらですか)」僕らは覚えたてのベトナム語の単語を適当に並べて口にだすと、子ども達はキャッキャッと嬉しそうにはしゃいでいる。
そのうち一人の子どもが、「バイバイ、ありがとう」と日本語で喋ってきた。
僕らが驚いているとみんな揃って「ありがとう」「ありがとう」と口々に言ってきた。
すごい、ここの小学校は日本語もちゃんと教えているのか……。
そんなベトナムの教育にオラは関心した。
別れ際に子ども達が一斉に校門の柵のあいだから手を伸ばしてきたので、僕らは握手を交わし「ありがとう」「ありがとう」と言いながら別れたのであった。
腹痛時のバス移動は大変だの巻
ハノイからフエまでの15時間のバス移動は私にとって史上最強につらいものでござぃました。
おなかの調子が悪い、痛い、キリキリ痛む。
バスの運転手に途中停めてもらい真っ暗の中を走る走る。
あまり遠くに行って行方不明と思われたら困る。
ここでしよう。
バスの後方から20メートルも離れてない草むらに腰をおろす。
あぁ……助かった。
何とも言えない開放感。
バスに戻って何とか寝る。
しかしこの一回で私の状況が丸く収まるわけがない。
朝の6時急激な腹痛で目が覚める。
バスが止まって荷物を降ろす作業をしている。
今だ!!今がチャンスだ!!
「トイレはどこ??」
運転手さんが無愛想に「あっちだ」とゆびを指す。
あっち???それはどこだ??
とりあえず一番近い民家の敷地に入るとお金持ちそうな建物の内部に3人の大人の姿が見える。
ベトナム語がわからない私はなんと言えばいいかわからない。
とりあえずジェスチャーで、おなかを押さえてトイレに行きたいと告げる。
(なんだこいつは??)と顔を合わせる家族
「お願い、お願い」手を合わせてお願いしたり、トイレットペーパーを出してアピールを必死にするけど
「%#$%#$*」どうやら無理と言われてる様
くるっと振り返って他に行こう思った瞬間、背中から汗が流れるもう駄目だ……。
この家の裏に逃げ込んでしまうしかない
そんな私の賭けと察してかおじさんが「%#$%#$*」どうやら貸してくれるみたいだ。
助かった……。
屋敷の中を走るとトイレが見えた。
ドアをパーンと開けると洗面所らしき所で若い女性が洗濯物をしている。
女性が家族に向かって何か叫んでいる。
「変な奴がいる~~!!!!」とでも言っているのだろうか?
おじさんが向こうから何か言っている。
(私の緊急事態)を教えてくれてるのだろう
その時私はすでに便器に腰をおろしていた。
あぁ……。
また命拾いした。
このロボットは、ハイカラな音楽が鳴ったり、時にはタイタニックの音楽を鳴り響かせて、街の人達に
自分の存在をアピールしてまわる。
この機械はいったい何なんだうか?
答えは身長と体重を一度に量れる画期的な、スーパーロボットだった。
ちなみに身長は靴底の分を引き、体重は服の分を引かないときっちりとは計れないのだが。
オラは5階の部屋に泊まっていたのだが、早朝から1階にあるインターネットをするために、エレベーターを待っていた。
しかし、エレベーターは3階で止まったままでなかなか上がって来ない。
朝一から階段を使う元気が無かったので、しばらく待っていた。
しかし、待てど暮らせど、エレベーターはなかなか上がって来ない、仕方がないのでしぶしぶ階段で下りる事にした。
エレベーターは3階で止まったままで全く動かない状態だった。
オラは気にせず、インターネットをしに1階に降りていった。
ベトナムのホテルのインターネットは無料で使用できるところが多いので助かる。
しかも、朝一は誰も使用してないので、使い放題だ!
オッキーの日記
フエ2日目 6:20の出来事
自分はいっつも早起きじゃけん、今日もみんなより早(はよ)ぉ起きた事だし、朝のお散歩でも行って来るかぁ~。
おっ、今日は5階にエレベーターが止まっとるぞ、バリ、ラッキー!
早起きは三文の徳っていうもんなぁ~
1階のボタンを押してっと、ポチ
5階 → 4階 → 3階 …… 3階、
「ん?動かんぞ、おーい!」
ブチッ「ぎゃぁ~電気が消えた~ 誰か~!」
落ち着け、わし、そうじゃ、こういう時は非常ボタンがあるはずじゃ、おっ、だんだん暗闇でも目が慣れてきたぞ、これじゃ、
ポチ……ツーツーツー 「おーい、助けてくれ~!」
─── 10分後
結局、誰にも気づかれず、ひとりで何とかドアをこじ開け、脱出する事に成功したのであった。