ニャチャンで海水浴の巻
フエは、王宮以外はこれといって僕らの興味のある観光場所はなかった。
1泊で充分だと判断した僕らは14時のバスでフエを発つことに決め、再びオープンツアーのバスに乗り込み、ビーチで有名なニャチャンに向かうこととなった。
ニャチャンには早朝6時到着予定である。
フエから乗ったバスは、ハノイから乗ったバスに比べ型が古いのか、揺れが酷くあまり乗り心地は良くはなかった。やはり、同じツアーでも当たりハズレがあるんだなぁと思った。
夜中の2時頃、バスがいきなり急停止した。
何とタイヤがパンクしたようだ。大型バスのパンクは今まで体験したことが無かったので大丈夫かと心配になった。
ハノイで知り合った日本人バックパッカーの話で、ベトナムのホーチンミンからの移動中、バスがいきなり故障し、24時間監禁状態のようになってしまったというのを聞いていたからである。
しかし、心配には及ばなかった。
僕らのバスは慣れた手つきでみるみるうちにタイヤの修理は終わった。
タイヤのパンクくらいは日常茶飯事のようだ!
夜明けに目が覚めたオラはバスの車窓のカーテンを開いた。
バスの外は、海岸線がどこまでも続いていた。海の水平線からは朝陽が昇り、キラキラとまぶしく輝いていた。
この旅で初めてのビーチなのでオラはワクワクしてきた。
ニャチャンには早朝、ほぼ定刻通りに着く事ができた。
ハロン湾で風邪をひいて全く泳げなかった分、ニャチャンのビーチでいっぱい遊ぶぞ!
ニャチャンの宿は、水着のままでいつでも行き来できるように、できるだけ海岸から近い場所を選んだ。
『ナムフーンホテル』一人1泊2米ドル。
海岸沿いのチャンフー通りから少し路地に入った場所である。
宿で一息ついたら早速、水着に着替えてビーチに出た。みんなでビールを賭けてのビーチフラッグ大会や、現地の子ども達とボディーサーフィンなどをして楽しんだ。
現地の男の子達の前で、海に向かってオラが前方宙返りなんかをしちゃうと、男の子達はオラに「もう一回!」「もう一回!」と催促してくる。
オラがしゃぁないなぁと、もう一度見せてあげると、もうそれだけでちびっ子達のヒーローになれちゃうのだ。
ビーチにはキレイな水着のおねぇちゃんもいっぱい、うーん、やっぱビーチは楽しいなぁ~♪
ビーチでまったりしていると、売り子達がフルーツやおかし、サングラスなどを売りにやって来る。そのうちのひとりの小学生くらいの女の子がガムを売りに来た。
僕ら、「ガムは要らないの。」しかし、売り子の子どもは「Why?」っと今にも泣き出しそうな顔で、しつこく僕らにガムを売ろうとしてくる。
オッキーは、「ガムは欲しくないけど、買ってあげようか」と言った。
マッキーは、「情で買ったら、この子はずっと勉強せずに売り子で楽に儲ける方法を身に付けてしまうんじゃない?」と言った。
子どものその表情に居た堪れなくなったのか、あけちゃんは「私らはこの子にとってどういしたらいいんやろうね……」と涙を流した。
オラはこの子は演技をしてるんだと思った。
「う~ん、じゃぁその代わり遊び相手になってあげる。」
やっぱ、子どもは遊びが大好き、オラが波打ち際まで抱っこして連れて行き、波が引いたところで降ろしてあげる。すぐに次の波がくるので、女の子は濡れてしまうんじゃないかと、キャッキャッと慌てだす。
波を被る寸前で、オラが抱き上げてあげる。
そのドキドキ感が、子どもには、たまらない様だ。
ちびっ子のハートをわしづかみするのも容易いもんだ。
それを何回も繰り返すうちに、ある時、大きな波がやってきて、その子がビチョ濡れになり、一瞬泣かしてしまった。
やっぱ女の子は苦手である……。
オラが疲れると今度は、木陰で寝そべっていたマッキーやあけちゃんにも遊んで遊んでとちょっかいをかけに行く。仕事そっちのけで僕らと2時間以上遊び続けた。
見かねた母親が子どもに近寄って来た。
「あんたっ! いつまで遊んでんるの?!」
売り子の子どもはシュンとなり、また「ガムを買って、ガムを買って」と言ってきた。
ようちゃんは「買ってあげることはできないけど一緒に売りに行こうか」って言った。
アコちゃんは「ごめんね、あんたからほんとは買ってあげたいんだけど、その美味しく無さそうなガムは要らないの」と言った。
子どもは、スネはじめ、何とアコちゃんの大事な浮き袋に木の枝でブスリと穴を空けた。
「こらぁ~! なんて事をするの! この浮き輪、プールで使う予定なのに、私泳げないのよ~!」
そうです、海水浴の後は泥風呂体験と温水プールで遊ぶ予定なのだ。
売り子の子どもとお別れし、僕らは泥温泉がある施設に向かった。
そして、海外初の温泉とプールでみんなは遊んだ。
アコちゃんは、暇そうにプールの端っこで、足をチャポチャポしていた事は言うまでもない。
海外に出てからお湯にしっかり浸かる事の無かった僕らは、大喜びで出かけた。
まずシャワーで身体を流した後は、バスタブに泥が注ぎ込まれ、それにゆっくりと浸かる。
泥風呂はホットとコールドがある。
ホットにする場合、スペシャル料金で割高になる。
タブはシングルとダブルとグループ用があるが、僕らはコールドでグループ用の大きなバスタブにした。
泥風呂でお肌がすべすべになった後は、38度の温泉でマッタリ、最後はプールで遊ぶ事にした。
入湯の際は水着の着用(レンタル有り)