水車の町「ハマ」の巻
ダマスカス滞在2日後、『アルハラ・メインホテル』を10時に出発し、市内の『ハラスターバスターミナル』から大型バス(90ポンド=約225円)に乗って水車の街ハマに向かった。
荒野を走り続けると西の方角にはレバノンの山々が連なって見えた。
その山のピークから谷にかけて降り積もっていた雪を見て、オラは急に寒気を感じ、そろそろ次の街で冬着の購入を考えないといけないなぁと思った。
そしてハマのバスターミナルには11時に到着した。
そこからセルビス(30ポンド=約75円)で約10分『リアドホテル』(一人1泊213ポンド=約533円)に向かった。
宿に荷物を置くとまずは街探索である。
ハマは、街の中心にオロンテス川という小川が流れており、川沿いには大きな水車が回っているのが特徴だ。
川の近くには、森林や小さな公園もあり、とても静かなところである。
そしてこの街ではハマロールというロールケーキが有名であった。大阪の堂島ロールのパクリか? と思ったが、食べてみると、これが結構いけるのである♪
是非お土産にと思ったが、ケーキなんか日本に送れるはずもなかった。
オロンテス川沿いをしばらく歩くと、4つの水車が見えてきた。それを見てふと日本の古い田舎の景色を思い出した。
しかし近か寄ってみるとそれは日本で見る水車よりもはるかに大きく、圧倒的な存在感をもって僕らの前に立ち塞がった。
夕日をバックに直径20メートルの巨大な水車がゆっくり回りながらギシギシと重い音を立てている様子は、まるで巨大な黒い生き物が泣き声を出すかのように、身体の奥に響き渡ってきた。
僕らは橋を渡り、川の反対側の道を通って他の水車も見に行くことにした。
ところがどうやら小さな村に迷い込んだみたいだ。あたりもだんだん薄暗くなって来た。
村の一角に明かりの灯った小さなお店が見えたので、店の人に水車のある場所を教えてもらいに行った。
小さなお店はどうやら駄菓子屋さんのようである。
店内には二人の男性が椅子に腰掛けて喋っていた。
僕らが道を尋ねるとふたりのお兄さんが、一緒に付いて行ってあげるよと言ってくれた。
ふたり揃って店をほったらかしで道案内をしてくれた。
店は開けっ放しなのにお客が来たらどうするのだろうとオラは不思議に思ったが、親切なお兄さん達は、そんなのお構いなしの様子だった。
しばらく歩くとお兄さん達は途中で場所が解らなくなったのか、すれ違った別の人達に場所を尋ねだした。
何故かその人達も道案内に加わった。
大人数でワイワイ歩いていると、今度は見た目が15~6歳の若者の男の子達が、近寄ってきて興味があったのか後を付いて来るようになった。
結局、水車に着く頃にはなんと、僕らは20人近くで大移動していた。どうやらこの国の人達は、親切心はもちろんのこと、興味のあることを優先に行動しているように思えた。
小さな広場にはオレンジ色の光でライトアップされた水車があった。
ところがそいつは全く動いていなかった。
僕らは遊び心で水車を回すことにしたが、近くで見るとそうとうでかく、2~3人の力では重くてびくともしなかった。
オラが水車の頂上までよじ登ると、他のみんなも加勢に入り、日本語で「いっせいのーで」といって一気に水車に体重をかけた。
するとギシギシと音を立ててみごと水車が回りだした。
「バンザーイ!!」大人も子供もみんな無邪気だった。言葉が通じないことを忘れる瞬間であった。
水車で遊び終わった後、若者達が目の前にある画廊を指差し、寄っていかないかと誘ってくれた。
中に入るとアバーヤを着たお姉ちゃんが対応してくれ、みかりん達は楽しそうにお姉ちゃんと絵画を見ながら会話をしていた。
オラはあまり絵画には興味がなかったので、ここに連れて来てくれた若者達とジェスチャーで会話をしながら遊んでいた。
しばらくしてみかりんが、明日お姉さんが家に招待してくれるらしいから行って来ていいかなぁとオラに訊いてきた。
女性メンバーだけで行って来るとのこと。
「え~、僕らもお姉さんの家行きたい!!」とダダをこねてみたが、男性陣はダメだと言われた。
アラブの女性は身内の男の人以外に素顔を見せてはいけないので、外では黒頭巾で目元以外は隠しているのだそうだ。
そのため、男の人はめったなことがないかぎり家には呼べないらしい……。
翌日、お留守番で寂しそうにしている僕らをよそに、女性メンバー達は画廊のおねえさんの家に遊びにいったのであった。
夜、女性陣達が宿に帰ってくると、嬉しそうに、色々話してきた。
綺麗なお家で、画廊のお姉さんの素顔も凄く可愛いかったと言っていた。
いいなぁ、僕らも可愛いお姉さんのお家に遊びに行きたかったなぁ……。
そして帰りに女性人みんなにお土産もくれたようだ。スカーフや洋服など……。
女性陣が喜んでいる中、めぐみちゃんだけ少し不満そう。
「なんかなぁ、私だけペットボトルで作ったへんな置物やねん。
せっかくもらった物やから捨てられへんし、旅に持ち歩くのは邪魔やねんけどなぁ……」
見ると、確かに子供が工作で作ったおもちゃであった。


クラック・デ・シュバリエは、十字軍によって建設され、その後イスラム勢力の手に落ちたお城である。
城内へ侵入するための攻城塔や、カタパルトによる投石を防ぐため、山頂に築城され、周囲は即斜面となっている。
城の内に入ると兵士の寝床、水洗便所、礼拝堂などがあり、見張り台に登ると内部の全景が一望できる。
ハマを8時に出発し、15時に帰ってくるツアーである。
料金350シリアポンド
クラック・デ・シュバリエの城は、天空の城ラピュタのモデルとなった城だという噂