取り残された二人の巻
タンザン鉄道二日目…….
オラは、熱い紅茶が大好き。
この日も朝から食堂車でティータイム。
のんびり紅茶を飲んでいるとそのままお昼になってしまい、そのままランチを取っていた。
他のメンバーもお腹が減って食堂車に集まって来る。
しかし注文したメニューは相変らず出てくるのが遅い。
先に食事を済ませためぐみちゃんとダイタが、自分達の車両に戻った後、慌てて食堂車に帰って来た。
「あけちゃんと菊ちゃんが怒ってるよ!」
それを聞いたオラは、慌てて車両に戻った。
「ごめん、まだふたりとも食事済ませて無かったんだよねぇ?」
あけちゃんと菊ちゃんはイライラしながら座席で待っていた。
「困るよ、僕達いつまでも食事に行けないじゃんか!?」
菊ちゃんはみんなが食堂車に行った事は知っていたが貴重品を置いていったため、動けなかったと言う。
あけちゃんは、寝ている間にみんながいなくなっていたらしい。
オラは、素直に謝った。
けれど自分は常に貴重品を持ち歩いているので、まさか菊ちゃん達が他のメンバーの荷物番をしているという意識が全くなかった事を伝えた。
菊ちゃんは、みんなにおいてけぼりにされたという疎外感からか、急に涙ぐみ始めた。
オラは、ふたりの表情を見て切なさを感じずにはいられなかった。
「ごめんよ」
でもなんか、いつものふたりと雰囲気が違うなぁ。いつもなら、メンバー同士、お互い気づかいながら言葉を掛け合うはずだし、みんなも声を掛けなかったのかなぁ?
何ヶ月も一緒に旅をしている仲間達がこんな事でトラブルになる事は、今まで一度も無かったのに……。
しかし、オラは他のメンバーと菊ちゃん達との間になにやら壁ができているのを最近感じていた。
たしかにインドで菊ちゃんが合流して以来、あけちゃんと菊ちゃんはふたり部屋で取る事が多くなった。
移動の時もふたりはいつも同じ席、オラはそれでもいいと思っていた。
だけど、この世界一周旅行はみんながひとつになって行動する旅。
なのに、菊ちゃんとあけちゃんは、仲間から距離を置いて行動し、みんなに合わせようとしないところも時々感じるようになってきた。
そんなところから、他のメンバーと菊ちゃん達との間に壁が生じてきていたのだと、オラは思った。
オラは、ふたりに今後どういう旅がしたいのか、正直な気持ちを聞いてみる事にした。
菊ちゃんは、キリッとした表情で、まっすぐオラの目を見て話してきた。
「正直、あけちゃんとふたりきりで旅がしたい! みんなから奪い取ってやろうと思い、再合流したんだ!」
オラはビックリした。菊ちゃんがそんな事まで考え再合流を考えていたなんて、想像すらしていなかった。
でも菊ちゃんは途中から旅に加わった自分が、旅の仲間を奪って行くのはやはり心苦しいものがあり、アフリカの旅が終わるまでにオラやみんなと喧嘩別れして出て行くのがいいのじゃないかとまで考えたらしい。
でも気のやさしい菊ちゃんにそんな事ができるはずもなかった。
あけちゃんは、菊ちゃんの心の本音をこの時始めて聞いて驚いていた。
菊ちゃんと一緒に居られる時間は限られているので、今はできるだけ一緒にいたい。ただそれだけを考えていたみたいだ。
オラは正直な今の気持ちを二人に話した。
「オラはふたりと最後まで一緒に旅がしたい。もしそうしてくれるなら、ふたりの時間を大事にしてもらったらいい、でももう少しだけみんなとの時間も作って欲しい。もし僕らと別れて旅をする事を決断するなら、残りの時間は最大限みんなとの旅に使って欲しい」
あけちゃんは、正直どうしたらいいのかよく解らないみたいだ。
菊ちゃんは、彼女の表情を見ながら「少し考えてみる…….」と呟いた。
菊ちゃん達は自分達の今後の旅の方向性が決まっていない。だからふたりともみんなに合わす余裕が無かったんだろうなぁ……。
そんな事を話をしているうちに、みんなが戻って来た。