みんながバラバラ事件の巻
ロンドン到着の翌日、僕らは観光のついでにニューヨーク行きの格安航空券を探すため、ビクトリア駅から二つ手前の駅、ピカデリーサーカス駅に向かった。
この辺りはHISやJTBなどの日系の旅行会社が多いので、言葉も通じて安心だと思い、安い航空券を求め、転々とした。
ある日系旅行会社でインド系の航空会社が最安だと紹介されたが、その旅行会社では何故か取り扱ってないので、僕らは翌日、印系航空会社の代理店に向かい、直接チケットを購入することにした。
故日系の旅行会社では、印系の航空会社とのやり取りがされてないのだろう……?
その時の僕らは、そんなことは全く気には留めていなかった。
しかしその疑問が、後々仲間の旅に終止符をうつような大事件に繋がるとは、この時は誰も予想していなかった。
イギリスのロンドンからアメリカのニューヨークへの片道航空券は、5万527円がこの時期最安値であった。
旅行会社のおねぇちゃんが言うには、90日以内のアメリカの滞在はビザが要らないとのこと。
しかしイギリスからアメリカに入る際は片道航空券のチケットでは入国できず、往復チケットか、第三国に抜けるチケットが必要なのだという。
僕らは、アメリカから陸路でカナダに抜けて、カナダから日本に帰ることも伝えた。
すると旅行会社のおねぇちゃんは、アメリカからカナダへはパスポートのチェックが要らないほど、バスが陸路で繋がっているため、カナダから日本に帰るチケットを持っていれば大丈夫だと教えてくれた。
ということでオラ・マッキー・ダイタの三人はカナダのバンクーバーから日本に帰るEチケットをカナダのHISにてネットで購入した。
これで日本に帰る段取りも整ったので、あとは日程に従って移動するだけであった。
ようちゃんは、バンクーバーで僕らと別れた後、ジャマイカへ行き、最終はアメリカのロサンゼルスから日本に帰る予定にしていた。
なので、ロサンゼルスから日本に帰るEチケットをネットで購入した。
みかりんは、世界一周航空券を持っているので、僕らと別の航空会社で移動する予定である。
ニューヨークに泊まる宿の予約も完了したので、みかりんとはニューヨークの宿で合流することになった。
出発当日の朝、宿からヒースロー国際空港に向う僕ら。
地下鉄で約30分の道のりだ。
空港に向かう列車の中では、みんな思い思いに、ニューヨークへの夢を描いていた。オラはまずマンハッタンで本場のハンバーガーが食べたいなぁ♪ 自由の女神はどれくらい大きいのだろうか? など考えるとウキウキしてくる。
色々と考えているうちに、空港の駅フィースローに到着した。
みかりんとは航空会社が違うので空港でひとまずお別れだ。
僕らも後を追う形で印系の航空会社でアメリカへ向かうことになった。
航空会社のスタッフは全員インド人のようである。
訝しげな顔で、僕らの様子をうかがうスタッフ達。
とりあえず、カウンターで荷物を預けて出国審査を受けることにした。
僕らはインド人のスタッフに航空券を見せた。
「おまえら片道チケットしかないのか?」インド人のスタッフは不思議そうな顔で僕らを見つめている。
「ちゃんとカナダから抜けるチケット持ってるよ、ほら!!」僕らは自身満々にEチケットの控えの紙を見せつけた。
その控えの紙にはバンクーバー→シアトル→ホノルル→日本と経由する行程が書いてあった。
別のスタッフも加わりふたりでEチケットの控えを見ながら何やら相談している様子。
「シアトルとホノルルと書いてあるがどこの国なんだ!?」スタッフが紙に指をさしながら僕らに訊いてきた。
「アメリカやん! え~そんなことも知らんの!?」僕らは思わず叫んでしまった。
しかしインド人のスタッフは見慣れないEチケットに戸惑いながらもなんとか僕らを通してくれた。
オラはホッと肩をなでおろした。
しかしふと後ろを見ると、今度はようちゃんが、何やらスタッフと揉めている。
ようちゃんはプリントアウトする時間がなくオラのノートパソコンにそのページを保存していた。
しかし、保存したページがEチケットを証明するものではなかったらしい。
ロンドンとニューヨークの時差が激しくて、アメリカの航空会社にも連絡がとれず、結局フライトの日程を変更するしかなかった。
なんと、ようちゃん一人イギリスに取り残されることになってしまった。
「明日遅れてニューヨークで合流するよ!!」ようちゃんは泣きそうになりながらも、ゲートの入り口で僕らに叫んでいた。僕らは戸惑い、その場で立ち尽くした。
オラは一瞬出直そうかとも考えたが、みかりんのことも考えた。
僕らと出会えないことできっと彼女は混乱するだろう。
それにようちゃんと僕らでは、チケットの内容も違う。
かわいそうだが仕方がない。
おいていこう。
「ニューヨークに着いたらメールするよ!!」オラはゲートの柵に身を乗り出して悲しそうなようちゃんに声を掛けた。
そしてオラのノートパソコンをようちゃんに預けた。
明日、全員が無事に、ニューヨークで出会える事を祈るしかなかった……。
さぁ、出発まで時間が無い、オラ・マッキー・ダイタの3人はダッシュでロビーを駆け抜けた。
オラは荷物チェックに引っかかりながらも無事クリアーした。
ダイタが「早く!早く!」とせかす。僕らは搭乗ゲートへ猛ダッシュした。
よし、何とか間に合った。
インド人の女性にチケットを見せ、飛行機に乗り込もうとしたその時。
またもや止められた!!
「もう時間ないんと違うのん!?」
焦る僕らの気持ちをよそに航空会社のスタッフ達は、関係なしに質問してくる。
「仕事は?」
「オフィスワーカー!!」とりあえず適当でいいやと思い、そう答えた。
「何のグループなの?」
「友達や!! 家族にでも見えるんかい!?」 もういいから早く飛行機に乗せてくれよ~。
オラはどんどんイライラが募ってくる……。
スタッフ達は、今度はひとりひとり分かれて質問してきた。
「何故、今日移動するの?」
「何故って、旅の日程が決まっているからやん!!」
「どうして昨日にチケットを購入したの?」
「時間が無かったからやんけ!!」
明らかに、どうでもいい質問だ!! 僕らの事を見た目で怪しんでいるとしか思えない。
ふと、登場口を見ると、なんと「CLOSE」のサインになっていた。
「げー!! どういうこと!?」
結局僕らは飛行機に乗せてもらえなかったのである。
僕らは、呆然としていると、スタッフの女性が、イギリスに再度入国審査を受けろと言ってきた。
「何でうちら飛べなかったん? ちゃんと説明する必要があるやろ!?」マッキーは怒り口調で、その女性に突っかかった。
「これは彼女の決断じゃなく、会社が決めたことだから直接チェックインカウンターで話しなさい!! とにかくあなた達は、すぐにここから出ていきなさい!!」強い口調で別のスタッフの女性が言ってきた。
「なんやとー!! ちゃんと説明もできひんくせに、おまえらこそ出て行けこの地球から!!」僕らはめちゃくちゃ腹がたったが、仕方がないので入国審査所に向かうことにした。
入国審査官からも「何で君達入国してんの!?」と怪しまれた。
そりゃそうさ、僕らイギリスから出してもらえなかったんだもの。
あまりの悔しさにオラは涙がこぼれそうになった。
僕らは早速飛べなかった理由を説明してもらうため、チェックインカウンターに向かった。
しかし、カウンターではセキュリティーの判断だと言って取合ってくれないのだ。
出た!! 責任転嫁!!
「じゃ、今すぐそのセキュリティーのスタッフを連れてきて、そいつに説明させろよ!!」
腹が立って仕方がない僕らは、カウンターの台を両手でバンバン叩いた。
このままでは高いチケット代が無駄になってしまうし、理由がわからないままではニューヨークにも飛べない。
僕らは納得する理由が聞けるまで、断固としてここから離れないとカウンターのスタッフに言った。
カウンターの女性は困った様子で事務所の奥に入ると、中から違うスタッフの男性が出てきた。
搭乗拒否の理由は第三国に抜けるチケットが無いからだと言って来た。
「いやいや、Eチケットは了解済みのはずなんだけど……」
とりあえず、オラはカナダのHISに電話してEチケットについて航空会社に電話で説明してもらうことにした。
ところが後でHISの人に聞いてみると、航空会社の搭乗拒否の理由はEチケットではなく、アメリカのビザが無いからだと言っていたらしい。
航空会社のスタッフは、今度は理由を変えて、HISの人に搭乗拒否の理由を説明し始めたのだ。
はぁ!? 日本人は90日以内の滞在にはビザはいらないっちゅうねん!! 僕らは窓口にもう一度話しに行ったがなかなか話が通じない。
するとダイタが、JALの日本人スタッフを連れてきてくれた。
ナイス、ダイタ!!
JALの兄ちゃんは、同じ日本人の僕らに同情してくれ通訳に入ってくれた。
専門用語が飛び交い何を話しているかよくわからなかった。
JALの兄ちゃんは、航空会社によって判断基準が違いますからねぇ、と困った様子で僕らに言ってくれたが、結局搭乗拒否の理由までは分からなかった。
航空券全額返金しろと僕らは窓口に言ったが、買った代理店に言えと突き返されるだけだ。
ああ~、何でこんな航空会社を選んでしまったんだろう。
預けた荷物を取りに行くのも一苦労だった。とにかく今日は出直そう。
「もう夜やし、明日大使館に相談やなぁ」
朝に出たのにスッカリ夜。一体空港に何時間いたことだろう……。
僕らがニューヨークに着いているはずだと思っているみかりんとようちゃんにも連絡取らなくては。
ようちゃんはたぶん「ホステル639」に戻っているだろう。
僕らも宿に予約の電話をしてみた。
しかし残念ながら部屋は満室のようだ。
仕方がないので空港のトラベルインフォメーションで、空いている安宿を予約してもらった。
見つかった先は1泊一人8,000円だが仕方ない。
空港からロンドンの中心地にあるこの宿まで、地下鉄で1時間、更に駅から歩いて45分くらい掛かった。
ロンドンの中心地にある駅から宿まで、住所だけを頼りに歩いて探すのだが、なかなかたどり着かない。
結局宿に到着するまでに、5人位の人に道を尋ねたと思う。
もうマッキーもダイタもほとんど気力が残ってない様子。
オラも明日からの試練を考えると憂鬱でしょうがなかった……。
ホテルに着いて、ネットを繋いで見るとようちゃんからのメッセージが届いていた。
やはりようちゃんは「ホステル639」の宿にいた。
ようちゃんも宿のパソコンで僕らの送ったメールを確認したようだ。
しかしみかりんからは、まだメールは届いていない。
予定では、みかりんはすでにニューヨークの宿に到着しているはずなのだが……。
非常に心配であった。
「チケットが存在しないのではなく、航空会社がお客様のチケットをデーター上で預かっている」と考えれば良い。
チケットはデーターベースの中にチケット番号と共に存在するので、チケットレスではない。
なので、旅行中に盗難にあってチケットを盗まれたり、紛失したりする事はない。
Eチケットとは、従来の航空券に記載されている内容を、紙の代わりに航空会社のシステム内に記録させるエレクトロニック・チケット(電子航空券)という新しいタイプの航空券なのだ。
旅程表のみを発行するので、郵送時の紛失などの心配もない。
海外旅行の場合、多くの国では「第三国への出国便/帰国便」が証明できるものを提示するよう求めてくる場合がある。
税関や入国審査では、「第三国への出国便/帰国便」を証明するものとして、旅程表を扱っている。
通常Eチケットの控えと旅程表が一緒になったページをコピーして証明に使うとよい。
3月1日午前10時
イギリス出国拒否されてしまいました。しかもオレだけ……。
理由は単純。
『ビザを取得していない場合、アメリカから90日以内に出国するチケットを持っていないとアメリカ入国できない』と言う決まりごとがあるため。
3日前にアメリカ行きの航空チケットを購入する際に空港会社に言われ、ロサンゼルスから日本へ帰国するチケットをネットで購入してEチケットで発行したんやけど、それをプリントアウトできず空港でチケット購入したって証明が出来なかった。
まぁ、なんとかなるさ~って思いで空港まで行ったんやけどダメやった。オーマイゴッド!!
今朝12時、13時発の飛行機に乗るため空港の登場窓口へ向かうと窓口の前で何やらスーツ姿の他のチェック係が……。
『ビザは持ってるか?』と聞いてくる。
『ビザは持ってないけど帰国チケットを持っている』と答えると『見せろ。』とのこと。まずい……。
他の3人はカナダからの帰国チケットを購入していてEチケットの控えも持ってたので難なく通過。
しかし、オレはEチケットの控えを持っていない。
こんなこともあろうかと旅メンバーのパソコンにEチケットのデーターをダウンロードしていたのだ!! パソコンを起動して係員に堂々と見せる。
係員『No!これは、Eチケットじゃない!』
オレ『え~!?』
たしかに、どこにもEticketの文字はない。しくじった……。
travelplanのページを保存していたのだ。
係員『今すぐ旅行会社に連絡してEチケットの控えをFAXしてもらえ!』
オレ『無理だよ~、旅行会社はロサンゼルス。いまは早朝5時。営業時間外だ!』
係員『じゃあ、今日は出国できない。明日来い!』
オレ『……。』
って事で、結局出国できずチケットを翌日の便に変更。変更手数料40ポンド(約9200円)も取られてもうた(涙)その後、ネットカフェへ直行して無事Eチケットの控えをゲット!! よし、気を取り直して明日リベンジや!!!!