二人の旅立ちの巻
菊ちゃんとあけちゃんが、僕らと離れてふたりで旅立つ日が近づいてきた。
ケニアの宿での出来事……。
オラが仲間と部屋で喋っていると、いきなりあけちゃんと菊ちゃんが、大事な話があると言って部屋に入ってきた。
「私達はこの旅で出会って、お互いを好きになってしまった。
常に菊ちゃんのそばにいたいと思っていたけど、仲間と行動することでふたりだけの時間がなかなか持てなくイライラし、ふたりの中でも喧嘩が絶えなくなってしまった。
みんなとの旅なので身勝手な行動は駄目なのは分かっていたけど、自分達に溜まったストレスを抑えることができなくて、ふたりの喧嘩の原因はいつもみんなのせいにしてしまっていた。
これから先、みんなと一緒にいると、私達がグループの雰囲気をどんどん悪くしてしまいそうなの。
だから、ようちゃんの誕生日を祝った後、カイロでみんなとはお別れすることに決めました」
あけちゃんは、真剣なまなざしでそう言った。
菊ちゃんもあけちゃんの意思を確認するかのように彼女の目を見つめていた。
「そんなん言われたら涙が出るやんかぁ……。でもふたりで決めたことだもんな。――オレ応援するよ!」
ようちゃんは、寂しそうな声で言った。
オラはふたりがみんなと離れて旅をしようと決断していたのを既に感じていたので、覚悟は決めていた。
「この旅は入るのも出るのも自由。ふたりがカイロでさよならすることを決めたなら残りの約2週間はみんなで旅を楽しもうな♪」
ようちゃんは、更に自分の今の思いをふたりに喋った。
「俺はみんなで楽しみたかったけどふたりには別の世界ができているようで少し寂しかった。
でも残り2週間はみんなで旅を楽しめるって考えると嬉しいよ。だけどなぁー、別れは寂しいなぁ」
ようちゃんにとってあけちゃんと菊ちゃんは、この旅をスタートして一番気が合う仲の良い友達であった。
中国やベトナムでは、いつも菊ちゃんと夜遊びに出かけ、地元の若者に絡まれそうになったこともあった。
あけちゃんが加わり三人でいる時は、いつもふざけあって遊んでいるような仲であった。
しかし、あけちゃんと菊ちゃんがお互いを意識しだしているのが分かってくると、ようちゃんは二人を気遣い、しだいに外れていくようになった。
だから、ようちゃんにとって一番思いの深いふたりとの別れは、誰よりも辛く感じているだろう。
ふたりと離れるのは凄く寂しいけど、みんなで温かく見送ってあげる事にした。
旅がスタートしてからというもの、あけちゃんと菊ちゃんは、僕らにとってホント大きな存在であった。
途中、仲間とうまくいかない事もあったけど、あけちゃんが「ようちゃんの誕生日までは、みんなとの旅を大事に過ごしたい!」と言った瞬間、みんなにあったわだかまりは嘘のようになくなっていた。
更にみんなも、残りの旅を昔のように仲間と楽しく過ごしたいと強く思うようになった。
仲間がひとつになった瞬間であった。