近年観光客も増えており、宿泊施設やツアー業者も増えてきている。近くには温泉も湧き出ており、ツアーの後は、温泉で疲れを癒すこともできる。
バハレイヤ・オアシスの南から、ファラフラ・オアシスにかけて、黒砂漠、クリスタルマウンテン、白砂漠など、超現実的な世界が広がっている。
新たなメンバーでの旅立ちの巻
新しいメンバーでの再出発で、旅の雰囲気もガラリと変わるであろう。
あけちゃんと菊ちゃんを見送った後、オラ、ようちゃん、ぷる君、ダイタ、めぐみちゃん、ケイちゃん、みかりん、ゆうちゃん、この8名で砂漠ツアーに行くことになっていた。
朝8時半カイロ市内のトルゴーマンバスターミナルからバスに乗り、ピラミッド横の砂漠ロードを走り、ツアーの拠点となるバハレイヤ・オアシスに向かった。
バスがターミナルを出発し郊外を走りだした頃、突然お姉さんタイプのみかりんが席を立ち、運転手に声をかけバスを停車させた。
海外添乗員のゆうちゃんとお姉さんタイプのみかりんが下車したかと思うとふたりは慌ててバスから離れて行った。
「なになに? どうしたの?」
5分程経ったが帰ってこない……。
バスの運転手がイライラしだして、クラクションをパンパン鳴らす。
みかりんが帰ってきたのでオラはどうしたのか聞いてみた。
どうやらゆうちゃんの体の調子が悪いという。
みかりんは、ゆうちゃんとここで降りてカイロに戻ると言って荷物を降ろし始めた。
すると、ゆうちゃんが戻ってきた。
「大丈夫、頑張って行くよ!」
みかりんは、ゆうちゃんの体調を気にしながらバスに乗り込んだ。
オラは、苦しそうにバスの座席に腰をかがめているゆうちゃんを見ながらこの後どうしてあげるのがいいのか悩んでいたが、いいアイデアが浮かばないままバスは走り続けた。
午後1時半バハレイヤ・オアシス到着。
ここでは、白砂漠に行くツアーを探す予定であった。
しかし白砂漠ツアーは砂漠の真ん中でキャンプをするツアーなので、体調の悪いゆうちゃんが砂漠で一泊するのは無理だと僕らは判断した。
ゆうちゃん自身も残念ながらここに残る事に決めたのであった。
集合場所を今いるバス停の前と決め、オラとみかりんは、ゆうちゃんが今夜泊まれそうな宿を探しに、そして他のみんなはツアーの予約の交渉へと分かれた。
バハレイヤ・オアシスでは、ツアーの客引きが大勢いるので、ツアーの交渉は慎重にしなくてはならない。
ナミブ砂漠ツアーの時のやす君とタカシ君のように夕食が豆とクッキーになっては最悪である。
その点も踏まえて捜してもらえるように仲間に頼んだ。
オラとみかりんは、目ぼしいホテルを見つけ一旦みんなのいるバス停のところへ戻った。
しばらくしてぷる君とケイちゃんも戻って来た。
どうやらホテルが斡旋しているなかなかよさそうなツアーを見つけたようだ。
僕らは宿とツアーがセットの方がゆうちゃんにも都合がいいと考え、ぷる君とケイちゃんが探して来たツアーに参加することに決めた。
ホテルでゆうちゃんの宿泊手続きと砂漠ツアーの受付を済ませたあと、ツアーの車が来るのを待っていた。
しかし時間になってもなかなか来ない。
事情を聞くと、どうやらツアーに使う予定の車が故障して動かないらしい。
急遽別のツアー会社に頼んでいるみたいだ。
30分くらいしてようやくツアーの車が到着した。
ツアーに使用する車は10人乗りの砂漠でも自由に走り回れる四輪駆動のジープのようだ。
屋根の上にはキャンプ道具がビッシリ積まれていた。
僕らの他に韓国人の家族が参加する様なので2台のジープ車が用意されていた。
午後4時、バハレイヤ・オアシスからいざ白砂漠へ、時間が遅れているので運転手はガンガン飛ばしていった。
砂漠の真ん中にアスファルトの道路だけが真っ直ぐに続いていた。
そこをひたすら風を切って走って行く。
砂漠と山の景色が圧巻であった。
しばらくすると砂漠の砂や山の色がだんだん黒くなってきていることに気づいた。
おおー、これが黒砂漠か~♪
僕らを乗せた車は真っ直ぐの道をひたすら走りつづける。
バーン!!
大きな音と共にいきなり車が急停車した!
なんと車のタイヤがパンクしたようだ。
しかし、別の車の予備タイヤでなんとか修理は完了した。
この旅で僕らは、何回タイヤのパンクを経験したことか……。
仕切り直して再び車は走り出す。沈む夕陽を追っかけて、ガンガン車は飛ばしていった。
たぶん、明るいうちにキャンプ場に着いてテントを張るのであろう。
黒い砂漠がだんだん白い砂漠に変わっていった。
いつの間にかアスファルトの道路もなくなっている。
砂漠の中をドリフトしながら走っていくとそこは想像もしていなかった世界に変わっていった。
なんだここは、火星か!?
地球上にこんな場所があるんだぁ……。
どこまでも続く砂漠に地面から生えた生き物の様な真っ白な石灰の奇岩群が無数に広がり、とても幻想的だった。
さらに車を走らせ、目的地の場所までたどり着いた頃には、すでに夕陽は沈んでいた。
薄暗くなった砂漠の景色は、白い砂や奇岩石が、青紫に目に映り、更に神秘的な景色へと変わっていった。
そしてキャンプ場でもなんでもない場所で、今夜のキャンプがセッティングされた。
セッティングといっても、テントを張るわけでもなく、車を壁にして毛布を敷いていくだけ。
しかしそれが、雨の降らない砂漠での自然のキャンプスタイルなのだ!
焚き火を囲みエジプトの楽器でリズムをきざみ、夜遅くまでドンチャン騒ぎが始まった。
いくら騒いでも近所迷惑にならないこの広い砂漠で思いっきりエジプトの太鼓を叩かせてもらった。
満点の星を見ながらそのまま寝るのも最高の気分だった。
7名がズラリと一列に並ぶと、ツアーの兄ちゃんが上から毛布を掛けてくれた。
今にもこぼれ落ちそうな星々を眺めていると、星空に吸い込まれそうになるくらい星を近くに感じることができる。
「星、近いねぇ!? 天の河もハッキリ見えるよ」
「あっ! 流れ星!」
「えっ! 見えなかった」
「オレ見えた!」
そんな会話をしながらいつの間にか眠りに入っていったのであった……。