毎年多数の日本人観光客が高級ブランドや美術館巡り、グルメツアーなどを目的にフランスを訪れている。
首都パリは、由緒ある歴史的建造物を有する世界屈指の観光都市で、「芸術の都」「花の都」と呼ばれている。
1ユーロ=約165円 (2007年2月21日~26日)
1ユーロ=現在のレート 夕立で濡れたパリの街は、夕日が反射してとても綺麗だ
ホームシックの巻
3日間の滞在で、ヴェネチアのお祭りを堪能した僕らは、16時10分発のローマ広場からの空港バスに乗り込み、約1時間でトレビソ空港に到着した。
そこからは、格安航空会社(ライアンエアー)に乗って、フランスのパリまで移動である。
ライアンエアーは、事前に予約していたおかげで、一人31.2ユーロ=約5148円という、国際線にしては超激安値で利用できた。
パリ行きの飛行機の出発は22時25分だった。
まだ5時間以上ある。僕らは空港内のファストフードのお店で時間を潰した。
ダイタ、みかりん、ようちゃんの3人はパリでの観光について、楽しそうに話し合っていた。
それに反し、オラとマッキーは物価の高いヨーロッパを、お金を使わずどうやり過ごそうかと話しあった。
出発1時間前になったので、荷物を預けるためチェクインカウンターに足を運ぶと、カウンターにはブロンズヘアーの素敵なお姉さんが立っていた。まるで映画に出てくる女優さんのようだ。
やっぱイタリアの女性は綺麗だなぁ……。
何気にカウンターの壁を見てみると、荷物に関する注意事項の張り紙があった。
その張り紙には……。
「預ける荷物は15キロまで、手荷物は10キロまでなら持ち込み可能。オーバーすると1キロに付き8ユーロの追加料金が必要」と書いてあった。
オラは自分の荷物の重さはいくらなのか気になったので、お姉さんのいるカウンター横の計量台の上に、自分の荷物を全て置いてみることにした。
やはり、エジプトのドラムやパソコンなどの電子機器をたくさん持ち歩いているオラの荷物は、他の仲間よりもだいぶ重いようで、カウンターの計りは、25キロと表示していた。
そこでオラは考えた。預ける荷物を15キロにして、機内に持ち込む荷物を10キロに分ければ、追加料金は払わなくて済む。
オラはカウンターの前で荷物を広げ、がむしゃらに入れ替え作業を始めた。
とにかくギリギリの重さなのでうまく分けないと重量オーバーになってしまう。カウンターの上に手荷物を広げ、重さが10キロを超えないように調整を続けた。
しかし髭剃り用のシェーバーひとつで大きくオーバーしてしまう。
しかもドライバーやライターなど、機内に持ち込めない物は手荷物に入れられないため、軽い物で微調整をするのが非常に困難だった。
オラの必死の梱包作業を一部始終見ていたカウンターの綺麗なお姉さんは、微妙な笑みを浮かべていた……。
このお姉さんは、オラのことを面白がって見ているのだろうか、それとも迷惑がっているのだろうか……。
どちらにしても少しぐらいの重量オーバーは許してもらえるんじゃないかとオラは少し思った。
しかし、この作業にゲームのような感覚を覚えたオラは、きっちり揃えないと気がすまなくなっていた。
そして30分後、みごと荷物を10キロと15キロにきっちりと分けることに成功した。
15キロのメインのバックパックをカウンターのお姉さんに預け、手荷物のサブバックは肩にぶら下げて、出発ロビーに向かった。
しかし荷物チェックの場面で、オラは重大な過ちに気付いた。
空港の持ち込み制限ルールで、100ミリリッター以上の液体は、機内への持ち込みが禁止されているのであった。
ジッパー付のビニール袋に入れておけば機内に持ち込めたのに、荷物の重さばかりに気を取られていてすっかりその作業を忘れていたのだ。
オラの荷物からは、シャンプー、リンス、マヨネーズ、挙句の果てに、マッキーが日本に一次帰国した時に頼んで持ってきてもらった“ポン酢”までもが、セキュリティーチェックに引っかかってしまったのだ。
ポン酢だけは勘弁して欲しかったのだが、オラの必死の抵抗も虚しく、鬼の係員の手によって捨てられた。
オラの目の前でゴミ箱にポイと捨てられた。
久しぶりのポン酢に仲間は大喜びだったのに、オラのあやまちのせいで……。
関西人が大好きな、何にかけても美味しく食べられるあの“ポン酢” ―― まだ一滴も使わず仕舞いのあの“ポン酢”―― みんなゴメンナサイ……。
イタリアのトレビソ空港から1時間20分のフライトで、フランスのボーヴェ空港に到着した。
腕時計の針は、もうすぐ23時になろうとしていた。
イタリアとフランスでは時差こそ無いものの、もう深夜だということに少し焦りを感じた。
ボーヴェ空港は、パリ市内から北に80キロも離れた空港で、あたりを見渡すとビルの明かりすらない、真っ暗な平野だった。
「こんな場所じゃ、今夜泊まるホテルなんて絶対見つからへんわ!!」やはり、安いチケットの裏には何か不便な事があるもんだ……。
僕らが呆然としていると、どこからか「最終バスが出るぞ!!」と英語で話す男の声が聞こえてきた。
どうやらパリ市内のポートマリオット駅行きのバスのようである。
とにかくこれに乗らないと寝る場所を確保できないと思い、慌ててそのバスに飛び乗った。
できれば安宿が多く点在しているリヨン駅までたどり着きたい……。
僕らを乗せたバスは真っ暗な平原をぬけて、徐々に都会へと近づいて行った。そして約1時間でポートマリオット駅に到着した。
そこからは、メトロ(地下鉄)に乗ってリヨン駅を目指すことになる。
最終電車には、ギリギリ間に合いそうだ。僕らは、重い荷物を担いだまま、地元の酔っ払いと一緒にメトロ(地下鉄)の列車に向かって走った。
そしてなんとかリヨン駅に無事に到着した。
時計の針はすでに夜中の1時だった。
駅からは、目当ての安宿を探し歩いた。
こんな夜中に到着して、宿に泊まれなかったらどうしようか!? 不安な気持ちを抱えながら、人気のないパリの街をテクテクとあるくこと約20分、ようやく安宿にたどり着いた。
僕らは、フーッと安堵のため息を付いた。
ところが、宿は一部屋も空きが無かったのだ……。
労困憊の僕らは、その場にひざまずいた。
「あー、やっぱり駄目だった!! 疲れたー! 眠いよー!」
そんな僕らの様子を見かねた宿の主人は、空いていそうな安宿の住所を調べて僕らに教えてくれた。
「なんてやさしい人なの……」みかりんが、目じりに涙をためながら言った。
オラとみかりんとマッキーはフロントで待たせてもらい、ようちゃんとダイタは歩いて空き宿を探しに行ってくれた。
そしてとうとう、パリの安宿をゲットすることに成功したのであった。
『ブループラネット』(一人1泊21ユーロ=約3465円) 。
フロントで受付を済ませた後、一番先に部屋にたどり着いたダイタは、バックパックを担いだままバタリとベッドへ倒れて寝てしまった。
そして全員入って10分も経たないうちに部屋の照明は消されたのだった。
ブループラネットでは、パリに対して強い思いのある仲間の意思を尊重して、6日間の滞在を決めた。
翌朝、窓を開けるとシトシトと雨が降っていた。
それでもみんなは、美術館や博物館、個々に計画を立てて、お昼過ぎには、それぞれが行きたい場所に散っていった。
オラも雨が上がるのを確認し、夕方頃から行動を開始した。
雨にすっかり溶け込んでしまっているパリの街並みは、夕日の光が路面に反射してセピア色に輝いていた。
セーヌ川沿いには、ノートルダム寺院を背景に架かるシテ島への橋や建物があり、まるで絵画のようだった。
そう、花の都パリに来ているのだ。しかし意外にも華やかな場所と言うよりは寂しい感じがするところであった。
それは、今の自分の気持ちが、そうさせているだけなのかも知れない。日本にいた時は憧れていたパリなのに、今はなぜか虚しい……。
長旅を続けていると感動が薄れて行く気がする。付き合い始めの恋人のように、最初の頃のドキドキワクワクが、だんだん薄くなっていく。
旅も同じかな? 初めの頃は何を見ても感動していたし、色んなトラブルも逆に楽しかった。
今は旅が当たり前の生活になっている気がする。こうして旅ができていることは幸せなはずなのに、今はそうではなくなってきているのだ。
パリ滞在2日目……。
宿の近くで無線ランの使えるマクドナルドを発見!! そこは自分のノートパソコンを持ち込むと、無料でインターネットが使い放題なのだ。
旅の情報探しにインターネットを使うのだが、普通に街のネットカフェを使うと、1時間6ユーロ=約980円。
ここマクドナルドならお昼にハッピーセット(ハンバーガー・ポテト・ドリンク・おもちゃ付き)を頼めば4ユーロ=約650円で済む。パリに住んでいる人が普通に食べるお昼ご飯が、だいたい7~15ユーロなので、マクドナルドならだいぶ安くつくし、お得な方法だ。
というわけで、オラは毎日マクドナルドに入り浸ることになった。やっぱ、ヨーロッパを旅するなら、お金を持ってリッチに旅したいなぁ。
お洒落な格好して、豪華な食事と美味しいワインを飲んで……。
貧乏パッカーの今のオラには無縁の話であった。
でも、もう苦痛に思うのは止めよう……。
夕方ふとエッフェル塔を眺めに行きたくなり、メトロに乗ってエッフェル塔の最寄り駅、シャン・ドゥ・マルス・トゥール・エッフェル駅に向かった。
駅を出ると、ちょうどエッフェル塔が綺麗なオレンジ色にライトアップされる瞬間だった。
ホント綺麗だなぁと、そのまましばらく眺めていると、今度はダイヤモンドの様なキラキラした光が塔全体に細かく散らばり始めた。
まわりから「ワァー」という歓声が聞こえてきた。
オラも思わず、声をあげてしまった。
それはわずか10分くらいの点灯だった。
パリに来てから今まで、何を見ても感動しなかった自分の感動スイッチが、エフェル塔のキラキラで一瞬にしてオンに切り替わった。
これこれ、この感覚。忘れていたものが一気によみがえった気がした。
感動することは、なんて気持ちがいいことなんだ……。
僕らは貴重な半年を使って旅に出たんだから、もっと楽しまないともったいない。
嫌なことや不安に思うことばかりに囚われていては、まわりの状況も素直に受け入れられない。
オラは急に子どもの頃に戻った感覚で素直に楽しみたいと思い始めた。
日本にいる時から遊園地などが大好きだったオラは、滞在中にパリのディズニーランドに行くことに決めた。
ライアンエアーは料金が驚くほど激安なため、格安という面では人気が高い。ロンドン-パリ間の料金がたったの0.99ユーロ(160円)~、という非常に安い料金であるということで一時話題を呼んだ(この料金は便数、座席提供数が限定されている)。そのため、早めに予約席することをお勧めする。
ただ飛行場が郊外から離れている場合が多いため、そこからの移動費用が多く掛かるのが難点である。
部屋はオートロックなので、帰って来てみんなを起こすのは悪いと思い、ドアにバッグを挟んで、少し扉を開けた状態で出て行った。
お腹が満たされ部屋に戻るとなんと、ドアが閉まっている!!
誰かが寝ぼけてドアを閉めたのだろう。
仕方が無いのでドアをノックするが、誰も起きてくれない(泣)。
近所に迷惑なので大声も出せない……。
オラは朝まで待つ覚悟を決めた。
ホテル・空港・カフェ・マクドナルド・スターバックスコーヒーなどに、使えるところがある。
有料か無料か、暗号付か暗号無しかは提供者次第なので それに従う。
ホテルなどは、暗号付きが多い。