ネパ-ルの首都 カトマンドゥは、標高1350mの高地にある、人口73万人のネパール最大都市。
ヒマラヤ登山をする者のほとんどはここで支度をする。
そのためカトマンドゥの街にはアウトドアグッズのお店が軒を連ねている。
また 伝統工芸品、歴史的建造物 等 世界遺産に登録されている。
さよならアコちゃん・オッキーの巻
3日間のラフティングを終えた僕らはみんなの待つ宿に戻ってきた。
あけちゃん・ダイタ・ぷる君の容態は、すっかり良くなっていた。
翌日はネパールの首都カトマンドゥに移動。
朝一のバスで5時間半の移動であった。
カトマンドゥに到着してタメル地区にある『ホーリーランドGH』一人1泊320ルピー(約580円)の宿に荷物を置くと、僕らは早速街に繰り出すことに……。
カトマンドゥは、さすがネパールを代表する街だけあって、ポカラに比べるとかなり賑わっていた。
メインバザールには、旅行会社やお土産用の雑貨屋や登山用のアウトドアショップなどがやたらと多く見うけられた。
そんなところからカトマンドゥは観光客を中心とした商売が盛んな街なんだなぁと思った。
食に関してもネパール料理以外に日本食レストランもたくさんあり、味にもかなり満足できる。喧騒的なインドの旅に疲れ、一旦ネパールに癒しをもとめに来る日本人旅行者が多いのもわかる気がした。
翌日は、自由行動でそれぞれ買い物に出かけた。
ぷる君とようちゃんは、アクセサリーが大好きで宝石店に2時間もいたらしく、ラピスラズリー(瑠璃色の石)を仲良くひとつずつ買っていた。後でようちゃんがネックレスにするのだと言う。
オラは、前々から欲しい物があった。
ネパールの両面太鼓『マダール』という楽器だ。
日本にいた時から打楽器には興味があったが、家では近所迷惑になるため、打楽器を練習することはできなかった。
でも旅中ならいくらでも楽器を叩ける場所はあると思った。
それに楽器を持ち歩いているとさすらいの旅人のようでなんだかカッコイイと思っていたし、現地の人とのコミュニケーションをとるのにもいいきっかけになると思ったからだ。
それともうひとつ気になっていた物があった。
ポカラに向かう移動中のバスで流れていた曲がいつまでも耳から離れず、それ以来ネパール音楽にハマッってしまっていた。
街を歩いていてもバスで聴いたその音楽がいろんなところで流れており、ついついその曲に聞き惚れてしまう。
CDショップでもその音楽が流れていた。
オラは「今流れている音楽のCDが欲しい」 と店のおやじに告げ、その曲が入った2枚のCDを購入した。
しかしそれだけでは収まらなかった。
楽器屋の前では『サーラギ』というバイオリンのような四本弦の楽器を、店の親父がオラに対して一生懸命弾いて聞かせてくるのだ。
それがまたオラの大好きなその曲に使われている楽器なので、またまたオラの購買意欲を掻き立てる。
しかし、楽器を2つも買ったところで荷物が増えるだけだし、日本に送ってもすぐに飽きると思っていた。
でも今は欲しい気持ちがおさまらなく、自分自身との格闘が始まった。
買うべきか買わずにおくべきか……。
結局『マダール太鼓』2000ルピー(約3600円)と『サーラギ』1000ルピー(約1800円)を二つとも購入してしまった。荷物は増えるが旅のお供に連れて行くことにしたのであった。
夕方みんなと待ち合わせをして、王宮の北側にある『ロイヤル華ガーデン』という温泉に向かった。
受付で温泉代一人330ルピー(約594円)を払うと男女別の更衣室に案内された。
更衣室の奥にはシャワー室とその隣に一人しか入れない家庭用の小さな浴槽が、いくつか設置されていた。
まさかこれじゃないだろうなぁと一瞬思った。
外に出てみると露天風呂と思われる大きな浴槽があるのを発見した。
ホッと一息ついて露天風呂の浴槽を覗いてみたら、お湯が全く入っていない。
「ゲーッ! どういうこと!?」
「まぁまぁ、そんな目くじらたてなさんな……。」奥から日本人のおじいさんが出てきて、慌てる素振りもなく答えた。
どうやら僕らは営業時間より早く来てしまったらしく、今から露天風呂にお湯を張るので1時間ぐらい待ってくれと言ってきた。
日本人のおじいさんは、お湯が溜まるのを待っている間、お茶を用意してくれネパールについて色々話してくれた。
ネパールでは医療も労働も教育も保証されていない。
だから家族で助け合うしかないんだってこと。
また、僕ら日本人よりずっと裕福な生活をしている人もいること。
モンゴル系の原住民はインド系の移住民に比べると貧しく、差別を受けたりもすることも教えてくれた。
ふと、ラフティングツアーに参加した時のロックのことを思い出した。
ロックはモンゴル系の顔立ちをしていた。ラフティングツアー最終日。
道具の片付けを手伝った現地の子ども達に余った食材を配っていたのだが、ロックは、子ども達の仕事の頑張りようを見て平等に食材を配っていた。
苦労を重ねて生きてきたロックだからこそ、家族のために余ったジャムやケチャップなど持ち帰る子ども達の気持ちが分かり、仕切って面倒見ていたのだろうかと思った。
露天風呂にお湯が張れたので、僕らは久しぶりの温泉を堪能することにした。
お湯に浸かりながらロックやプーナなど川の男達のことを思い出し懐かしく感じた。
お湯が熱くなかったせいか結局2時間も湯船に浸かってしまい、おかげで身体はダルダルになってしまった。そして僕らは酔っ払いの様にフラフラしながらゲストハウスに帰ったのだった……。
翌日、僕らは、カトマンドゥを16時半に出発し、ネパールを横断後、走る世界遺産(ミニ蒸気機関車)に乗るため、インドのダージリンへ向かうのであった。
途中の国境の町(カカルビッタ)には翌日の朝に到着予定である。
そして約2ヶ月間共に旅してきた、アコちゃんとオッキーとのお別れの時がやってきた。
アコちゃんは寿司屋の看板娘で、年末の忙しくなる時期まで、僕らと一緒に旅をすることを決めて参加した。
怖がりなくせにチャレンジャーなアコちゃん。
欲しい物には糸目をつけない、けど値切るの大好きアコちゃん。
最後にみんなに100ルピーずつお小遣いをくれた太っ腹なアコちゃん。
誰かが病気している時、必ずバナナや果物を買ってきて看病してくれるアコちゃん。
ポカラの宿で、みんなが病気で寝込んでいる時のこと。
日本食屋さんのレストランで「いつものやつ」と言って、おにぎりを病人のみんなのために持ち帰っている姿を見ると、本当にお母さんのような存在であった。
そんなアコちゃんと別れるのは凄く寂しい……。
オッキーは、早とちりで、日本でインドビザを早く取り過ぎたため、インド滞在中にビザが切れてしまうことが発覚。
タイで延長ビザを取ろうとしたが時間が無く、結局ネパールで滞在し、延長ビザを取ることとなった。
そのため、僕らとココでお別れに……。
なんとまぁオッキーらしいお別れだ。
タイの宿のベランダでふたりでビールを飲み明かした夜のこと。
夜風に当たりながら、しんみりとした雰囲気の中、オラはオッキーに問いかけた。
「もうすぐお別れやなぁオッキー。みんなと別れた後、二ヶ月間ひとりでインドを旅するんやろ!?」
「そうじゃ、何が起るかわからんインドではたぶんワシにとって至難の連続やと思うわ」オッキーはビールを「ぐびっ」と飲み干すと、星空を見ながらそう言った。
「そうやなぁ、でもいろいろ至難はあってもそれはオッキーの人生にとって全部必要な壁(試練)やからな。
“人生に乗り越えられない壁(試練)は無い”オッキーなら何とか乗り越えられるって!」オラも残ったビールを飲み干した。
オッキーはオラの言葉を聞いて眉をキリっとさせた。
「あたりまえじゃ、逆に壁を楽しんでみせるわ!」オッキーは片手に持った空き瓶を空中に向かってブルンブルンと回し始めた。
あかん、ちょっとオッキー酔っ払っているわ、と思ったが、オッキーは旅の始めに比べ、見た目も中身もずいぶんワイルドになったとオラは思った。
そして別れの当日、僕らは次の目的地に向かうため、バックパックを背負いカトマンドゥのバス停に歩いた。
アコちゃんとオッキーは僕らをお見送り。
バスに乗り込む直前、ふたりは僕らに最後の言葉を送ってくれた。
「みんなと旅できて本当に幸せでした。みんなと一緒だから、見える景色も違うくって、感じるものも違うくって、最高の宝物です」アコちゃんは、いつもと変わらぬ元気いっぱいの表情で話してくれた。
「いざぽんに手紙を託したけん、みんな受け取ってな。二ヶ月間長いようで短い旅じゃったけどみんなと過ごせてよかった。
一緒に旅してくれてみんなありがとう!」オッキーは笑顔で話してくれたけど目じりには涙が溜まっていた。
最後はみんなで抱き合いながらふたりと別れた。
今まで、楽しい旅の思い出をありがとう……。
僕らがバスに乗り込み、座席に座ったとたんにバスが動き出した。僕らは慌てて窓から顔をだし、彼らに向かって叫んだ!!
「オッキー、アコちゃん、また、日本で会えるのを楽しみにしているで!!」
ふたりの姿が小さく見えなくなるまでいつまでもいつまでも彼らが手を振っているのが分った。
夕暮れの日差しが逆光に映り、とてもまぶしく感じたのであった。
さよならオッキー・アコちゃん
カトマンドゥーからネパールの国境カルビッタに向かうバスの車内での出来事。
マッキーの席はリクライニングが全開で倒れたまま戻ってこない状態で壊れていた。
そして現地の若い兄ちゃんがマッキーのうしろの席に乗ってきた。
「オイお前、席倒しすぎだぞ!」
「壊れているから上がらないのよ」
「ウソつけ!! 早く元に戻せ!!」
「だから動かないって言っているやろ!!」
「オーノーこんな席じゃ寝られないよ!」
「もうウルサイ!! 何回も言って来るな!!」マッキーは現地の若い兄ちゃんの言葉がウザくなり、寝たふりを続けた…… 「zzz」
その後マッキーは後ろの席の隙間から意地悪でタバコの煙を吹きかけられていた。
そしてとうとうマッキーはぶち切れた!!
乗り物でのトラブルは多いので気を付けよう。