カンボジアのイケメンの巻
プノンペンから、アンコールワット遺跡があるシェムリアップへは、6時間の旅となった。
シェムリアップには14時に到着した。
バスを降りるとトゥクトゥクやバイクタクシーの客引きがバスを囲むほどの人数で待ち受けていた。
今までに無いほどの熱烈歓迎だ!
オラは必死にアピールしてくる客引きの中をかきわけ、どさくさに紛れたスリや置き引きに荷物を盗られまいと、まずはバスのトランクスペースから出てくる自分達の荷物を確保する事に……。
とその時、悲鳴が聞こえてきた。
「やめて~、助けて~!」なんと、オッキーが、おじいちゃんの客引きに腕をつかまれ、連れて行かれそうになっていた。
え~! なんで女の子やなしにオッキーが連れて行かれそうになっているねん?!
オッキーはなんとか自力でおじいちゃんの腕から逃げ出した。
そんな状況の中、「どこの宿に泊まりますか?!」バイクタクシーのイケメン兄ちゃんが日本語で話しかけてきた。
オラはガイドブックに載っていた宿に連れて行って欲しいと言った。
彼はその宿のスタッフだと言う。宿の名刺も持っているし、この兄ちゃんでいいかとみんなに確認する。
慎重派女マッキーが「そんな名刺、客引きならみんな持ってるって! 多分日本人に人気がある宿のスタッフだ、って言ったら、ついて来るって思ってるんじゃない? だからこの人はスタッフじゃないよ!」
すると「うっ、うん」とバイクタクシーの兄ちゃんは頷いた。
「僕はスタッフじゃないです。でもアンコールワットの観光に僕らのタクシーを使ってくれたら宿まではタダでいいです」バイクタクシーの兄ちゃんが悲しそうな表情だけどまっすぐ目を見て話してきた。
「まぁね、タダだしね、いざぽんに任せるよ」とみんなは言った。
このバイクタクシーのイケメン兄ちゃんの名前はサリー。
サリーは仲間を呼んで僕らを宿に連れて行ってくれた。
「あなたの選んだ宿はあまり良くないですよ。
それより私がいいとこ知ってますよ?」サリーはオラをバイクの後ろに乗せたまま喋りかけてきた。
「いいよ。良いか悪いかは自分の目で確かめるから。」
そして、宿の前に着くとオラと菊ちゃんで部屋のチェックをしに行った。
ガイドブックに“お薦めの宿”と書いてあった割には綺麗ではないし、値段も高くなっていた。
僕らは、オールドマーケット近くのサリーお薦めの宿も見に行くことにした。
宿名は『ガーデンビレッジ』南国風のバンガローの部屋で、別館の二階にサンセットバーがあり、かなりオシャレ。
宿の値段も一人1.5米ドル(約176円)で、超安い。よし、ここに決定!
バンガローの前で部屋決めをした後、今度は、サリーと今後の観光の段取りを話し合った。
「こんな感じの予定になったけどどう思う?あけちゃん!」オラは、みんなの後ろの方にいたあけちゃんに確認をとろうとした。
「う~」あけちゃんは苦しそうにその場にしゃがみ込んでいた。
「どっどうしたのあけちゃん?」
「お、お腹が痛い!」
腹痛の原因はやはり、プノンペンで飲んだ生水であろう。
病院にはオラとマッキーが付き添い、トゥクトゥクでサリーが連れて行ってくれた。
病院のベッドでは、何度も何度も点滴が繰り返された。
約2時間半もの間、常にサリーは付き添ってくれた。
言葉の通じない面もあり、サリーがいてくれてほんとに助かった。
こうしている間でもバイクタクシーの仕事はできるであろうが、彼はオラやマッキーにも「お腹空きませんか?」と気を使ってくれていた。
サリーはいいやつだなぁ~。
カンボジアで入院の巻
病院の処置室では、見慣れない日本人がいるせいか、
色んな現地人が話しかけてくる……。
言葉は全く理解できないけど
「どうしたんだ??」
「お腹がいたいのか??」
「この点滴で治る、頑張れ」
そう言ってるのが分かる。
アリガトウアリガトウ。
ベッドに横になっていると、また不思議と眠くなっていた。
うっすらと物音が聞こえる中、子どものはしゃぐ声がする。
どうやら走りまわってる様。
お願いですここは病院です、お姉さんはしんどいんです、病人なんです。
心の中でひたすら祈る。何で誰も注意しないんだーちょっとイライラしてくる私。その瞬間、起きてはいけない事が起こった。
ガッシャーン
男の子がベットにぶつかってきて、そのひょうしに点滴台が倒れた
ビヨ~ンと引っ張られ、私の腕から針が抜けてしまい刺入部から血が噴出してきた
ギョエ~
大慌てで看護婦さんが止血にやってくる。
子どもは処置室から泣きながら出て行く、痛いんだね??転んだ所が痛いんだね??お姉さんも痛いんだー
……。
治療が終わり先生が診断書を書いてくれた
診断名……。食中毒
やっぱりか……。
しかし、今回はいろいろ考えさせられる部分もありました。
医療は処置のみでは語れないものが必ずあると思う。
それは痛い痛いという部分を看護師さんが、さすってあげるだけで落ち着いている患者さんの姿や、睡眠薬を服用してもなかなか眠れない患者さんの話を聞いてあげた時に、患者さんが「ありがとう、何だか眠れそうだよ」
そう言った時の姿。
そして今日私も病院まで一緒に行ってくれた仲間の優しさや先生の冗談や看護師の手のぬくもりに随分助けられた。
弱ってしまった時に受ける人の優しさには心から助けられる。私も誰かが助けを求めている時にはさらりと手を差し出せる人になろう。
そう思った。