新約聖書にも数々の地名が登場し、現在もその名が使われている。
そしてキリスト教とイスラム教が融合する都市でもある。
シリア人は皆、人懐っこく、ホスピタリティが溢れている人間味溢れる国である。
1シリアポンド=当時約2.5円
1シリアポンド=現在のレート

ウマイヤド・モスクのミナレット。
モスクとはイスラム教の礼拝堂のことで、ミナレットとは礼拝時刻の告知(アザーン)を行うのに使われる塔のことである

シリアの街並みは建物がみな乳白色に統一されていてなんとなく殺風景な感じがするが、夜は街の明かりが、とても色鮮やかである

いつも買い物客で賑わっているダマスカスのアーケード街(スーク・ハミディーエ)

オロンテス川の4つの水車。
ギシギシと辺りに鳴り響かせている水車の重い音色が印象的だ

シリア ルートマップ
シリア入国の巻
ヨルダンから次の目的地シリアへは、国境バスに乗って行くことになった。
車内ではミネラルウォーターやおしぼりのサービスもあり、まぁまぁ快適なバスである。
アンマンを9時に出発し、途中国境にて出入国審査を終わらせ、シリアの首都ダマスカスには昼過ぎに到着予定だ。
まずシリアに入国するには必ずビザが必要になる。
ネットで調べたところ、シリアの国境でのビザの取得は難しいと書いてあったので、僕らは前もってエジプトのカイロにあるシリア大使館にて、ビザを取得していた。
ところがアイスランド人のムームだけシリアビザを持っていないらしい。
僕らが、「シリア国境でのビザ取得は難しいのではないの?」と言うと、ムームは「国境で取れるはずだ」と自信満々に言う。
でもムームが何を根拠に国境で取れると言っているのかが分からなかったので、僕らは「それ、昔の情報やないの?
その時期の国の情勢によって変わるし、たぶん今は無理やと思うで」としきりにムームに訴えていた。
僕らを乗せたバスは、茶色の砂と岩とがゴツゴツと続いている砂漠の道を走り抜け、ハイウェイを経て街中の大きな建物の駐車場にやって来た。
どうやら国境にたどり着いたようである。
バスのドアが開くと、ムームはさすがに僕らの言葉に不安を感じたのか、後部座席に置いていた自分のバックパックを担ぎ、そのまま出入国管理事務所に向かった。
もし、僕らの言う通りシリア国境でのビザ取得ができなかったら、ここでお別れになることを覚悟したのであろう。
彼は入り口から左方向にある、ビザを発券してもらうための窓口の方へと歩いて行った。
そして僕らも、ムームと逆側にある一番右端の出国審査の列に並びに行った。
今まで何度も国境越えを経験してきたが、いつまでたっても出入国審査の緊張感だけには慣れない。
オラの前には、同じバスに乗っていたヨーロッパ人のカップルが並んでいた。
そして彼らの順番が来た時、今まですんなり進んでいた順番の列の流れが急にそこで止まってしまい、なにやら思わしくない空気が漂った。
ヨーロッパ人のカップルが入国審査官と揉め始めたのである。
入国審査官は、二人のパスポートを見るなり何か不審に思ったのか、窓口の奥で彼らのパスポートを必要以上に念入りな調べ方をしていたのである。
ヨーロッパ人の彼が、パスポートを返せと怒鳴っている。
しばらくして彼らにパスポートが返却されるとカップルは、怒ってどこかへ消えて行った。
どうやら審査が通らなかったようだ。
目の前で審査が通らない人を見たオラは、自分達は大丈夫かと心配になった。
いっぱい質問とかされないだろうか……。
ドキドキしながらパスポートを窓口に差し出すと、ポンポンとスタンプを押され、意外にあっけなく出国審査が完了した。他の仲間も何のトラブルもなく審査を終えた。
さて、ムームは無事にビザを手に入れることができたのだろうか?……。
彼がなかなか僕らの元へ帰って来ないので心配になった。
やはりビザの申請の許可が下りなかったのじゃないのかなぁ。
ムームとはここでお別れのような気がしてきた。
この後、ムームはインドに向かうと言っていたのを思い出し、オラは手元に残ったインドの通貨(ルピー)をムームにプレゼントしようと思った。
正義感が有り、真面目なムーム。短い間だったけどいい奴だったなぁ~。
さよならムーム、また会う日まで……。
みかりんは、ムームのことが心配になり、彼の向かった窓口の方へ歩き出そうとしていた。僕らもその方向を見つめていた。
――すると向こうから、ムームが走って来た。
「Ⅰgot the ticket !!」ムームが大声でこちらに向かって叫んでいる。
なんと、ムームは無事出国手続きを完了したらしい。
ここ最近では情勢も緩くなり国境でのビザの取得が簡単になったのであろうか……。
ムームは、パスポートを頭上に上げ、ニコニコしながら、審査を通った事をアピール。
ちょっと焦った出入国審査であったが、全員無事シリアに入国できた。
そして僕らは、シリアの首都ダマスカスに向かうため、再び国境バスに乗り込んだ。
ふと見ると、オラの前の席が二つ空席になっているのに気付いた。
そうか、ヨーロッパ人カップルは、シリアに入国できなかったのだ。
そう思うと、もし仲間の内の一人でも審査が通らなければ一緒に旅を続けて行くことができなくなるんだなぁと、空いた席を見て切なく感じたのであった。