城壁に囲まれた街西安の巻
前門バスターミナルからバスで30分移動し、北京西駅に着いた。高さ100メートルの宮殿風の外観を持つ駅舎は、アジア最大級であり、その大きさに僕らは圧倒された。駅のプラットホームもまた凄い。近未来空港を思わせる作りで、まるで、銀河鉄道が発着しそうな駅であった。
そこから西安駅までは夜行列車で14時間の旅である。みんなの席はバラバラで、オラは三段ベッドの一番上であった。三段目は結構高い位置なので上るのに最初は苦労するが、それも段々こなれてくる。一番上の両方のベッドの手すりに、腕を伸ばしてヒョイと飛び移り、鉄棒の逆上がりの要領で自分の寝床にそのまま転がるのである……。
寝台車の廊下の窓側には椅子が付いているので、そこでみんなと会話することもできる。寝台車はなかなか快適で、あっと言う間に朝になり、お昼過ぎには西安駅に到着した。
西安の街は城の外壁に囲まれた古風な街で、北京市街とは全然違った感じがした。まるでドラゴンクエストの世界で新たな街にたどり着いた時のような雰囲気だ。
まず僕らのお仕事は、次の目的地、成都行きの鉄道チケットの確保と宿探しである。今回はオラと英語が得意なあけちゃんとすし屋の看板娘のアコちゃんと慎重派女のマッキーでチケットを購入しに行った。西安行きのチケットは北京での経験もあり、わりと苦労もなく取る事ができた。
僕らは、北京での連休による足止めもあったので、できるだけ前へ進みたかったので、西安は1泊の予定だった。しかし、翌日の夜行のチケットは空きが無かったので、2日後に出発のチケットを購入した。
鉄道チケットの購入も無事に終わり、荷物を見張っているみんなのところに戻った。すると既に、宿の確保も他のメンバーが終わらせていた。ぶっ飛び男の菊ちゃんが客引きと交渉して部屋も確認してくれていた。
さすがみんな、旅なれてきたんだなぁと実感した。
宿は駅の南西200メートル程にある『緑島国際青年旅舎』というユースホステルで8名部屋のドミトリーを確保。会員証の提示で一人40元(約600円)、一階には安いネットカフェ1時間5元(約75円)もある。駅から近くてとても便利だ。
ここのユースホステルは、宿の雰囲気もいいし、スタッフもフレンドリーで楽しい。廊下の壁には自由に落書きができるので、僕らも記念に落書きを残してみた。
宿で一息ついた後は、近所の街を探索。西安の街は思った以上に広くて都会だ! まるで、大阪の梅田の街の様だった。
お腹が空いてきた僕らは、レストランを探すこととなり、西安駅から500メートルぐらい南に歩いたところで安くて美味しそうな店を発見した。
店に入るとウェイトレスさんが、奥に連れて行ってくれたのだが、なぜかVIPルームのような個室に通された。
「なんか豪華過ぎない?」警戒心の強い僕らは、別料金がかかるのじゃないかと何度も何度もウェイトレスさんに確認した。
「ねぇ、ねぇ、おねぇさん、おねぇさん、部屋代、別料金で取ったりせんと?」あけちゃんが、訊いてみた。
「可以、没何題!(はい、大丈夫です)」
「ほんとに大丈夫かなぁ? 外人料金が掛かるとか?」アコちゃんが首をひねりながら言った。
「なんで、私達だけ個室なん? おかしいやん!」マッキーが鋭くいい放った。
「たまたま、団体用テーブルが空いているからよ。それより早くお座りなさい!」
「私達、貧乏人だから、あのお客さん達と同じ席にしてよ!」
「あなた達8人でしょ、だからここしか空いてないの!!」ウェイトレスさんは、おまえらええ加減にせいよ!と言わんばかりに切れ気味な態度になってきた。他のウェイトレスさん達もへんな外人が来たと思い、面白がって僕らの部屋に集まって来た。
料理は豪快な肉料理、見た目はプリンの様だが味は茶碗蒸し、たこ焼きの様な物など、今まで見たことの無い料理を20品ほど頼んだ。ビールも頼んだにも関わらず、ひとりたったの20元弱(300円)安い!しかもめちゃ美味かった!僕らにとっては、かなり満足な夕食であった。
宿に帰ってからは菊ちゃんの断髪式が行われた。菊ちゃんは自前のバリカンを取り出し、ペットに飼っていた犬のカット経験のあるアコちゃんに、かっこいい髪型にカットしてくれと頼んだ。
「私、人の髪の毛カットしたことないからどんなんなっても知らないよ!」アコちゃんが訊いた。
「いいよ、好きなようにカットして!?」菊ちゃんは、アコちゃんにバリカンを手渡し、上半身裸になってシャワールームの床にしゃがみこんだ。
「解った、でも変になっても責任取らないからね!」アコちゃんはニヤリとしながら、菊ちゃんの後ろ側に回り、なんのためらいも無く、ザックザックとカットしていった。
そして5分も経たないうちに菊ちゃんの断髪式は終了した。その頭は、見事なまでのモヒカン頭にカットされていたのであった……。
彼は、アコちゃんを信じてしばらく鏡を見ない事を約束した。この髪型で、本当に世界を周るのだろうか!?
かなり快適だが、スピーカーの真下の席を取ってしまったようちゃんは、放送や音楽がうるさくて寝られないと言っていた。
中国の場合YH (ユースホステル)も結構使う事が多い。
探し方は、ガイドブック・インターネット・宿の情報ノート・宿で知り合った人の情報など。YHでは次の目的地のパンフなどもよく置いてある。
僕らは大人数なので大抵移動前に決めておく事が多い、見つからない時は現地で客引きに交渉もする。
その場合、必ず部屋を見せてもらってから決めている。