アスワン観光の巻
カイロ滞在4日目……。
僕らはギザのピラミッドに続いて、観光客にとってはハイライト的な場所でもあるアブシンベル神殿に行くことに決めた。
そのアブシンベル神殿の観光の拠点となる街はアスワンであり、今回目指す場所でもあった。
僕らは午前中に地下鉄ナセル駅(サファリホテルの近く)から二つ目の(ムバラク)駅まで移動し、徒歩1分の場所にある国鉄ラムセス中央駅で、アスワン行きの鉄道チケットを買いに行った。
しかし切符売り場のおばちゃんは「ここでは買えない」と言ってくる。
他の窓口にも行ってみるが、どこに行っても断られる。
駅の公安官に場所を聞くとやはり最初の売り場で合っていると言われた。
おかしいなぁ、僕らの聞き間違いなのかなぁ?
もう一度窓口のおばちゃんに尋ねてみると、今度は「もう売り切れだ」と言ってきた。
さすがにこれは怪しいと思い、さっきの公安官を呼んで売り場に一緒に付いて来てもらった。
すると、すんなりチケットが買えてしまった。
なんでやね~ん!!
後から聞いた話によると、旅行者は現地の人と同じように、ラムセス中央駅でアスワン行きのチケットを買うのは難しいそうだ。
旅行者に対して高額でチケットを販売しようとしている旅行会社が駅の窓口では売らないようにとでも言っているのだろうか?……。
サファリホテルを拠点に各観光地を巡る事に決めていた僕らは、3泊分の荷物だけをまとめ、残りの荷物はサファリホテルに預けた。
一方、二日前に僕らと合流したばかりの海外旅行経験が豊富なゆうちゃんと、お姉さんタイプのみかりんは、僕らと今後中東を旅するため、シリアビザの申告手続きをしなければいけなかったので、引き続きカイロに残った。
彼女らとは三日後サファリホテルで再合流する予定だ。
昼間に無事9人分の鉄道チケットをゲットできた僕らは、その日の深夜に宿を出て、ラムセス駅を0時半に出発するアスワン行きの列車に乗った。約10時間の旅である。
朝方の列車から見える景色は砂漠ばかりであったが、アスワンに近づくにつれ雰囲気が変ってきた。
このあたりはナイル川の流域で緑がたくさんあり、カイロとは全然違った感じがした。
アスワン駅に到着したのは、お昼前であった。
まずは、駅から歩いて2分~3分のところにあるガイドブックに載っていた宿に泊まることにした。
マルワホテル一人1泊6ポンド(約132円)は超お徳である。
ここの宿ではアブシンベル神殿バスツアーも申し込むことができた。
明日の朝4時にバスが宿の前に迎えにきてくれる予定だ。
そしてアスワン到着1日目の今夜は、ようちゃんの誕生日パーティーだ。
それは、あけちゃんと菊ちゃんにとって、世界一周メンバーと過ごせる最後の大イベントの日でもあった。
ケニアのナイロビで立ち寄ったスーパーでの出来事……。
あけちゃんが、ようちゃん以外のメンバーを集めて、みんなでバースデーカードを選び、その間に菊ちゃんは、カツラコーナーで、ようちゃんの気を引くため、髪の毛のない自分の頭にカツラを乗せて遊んでいた。
選んだバースデーカードは、一緒に旅してきたメンバーが、思い出のメッセージを寄せ書きするため、一番大きなやつを選んだ。
カードを開くと、ハッピーバースデーの音楽が流れるとっても可愛いやつである。
ぼくらは、自由行動中にそれぞれようちゃんの誕生日プレゼントを買ったり、バースデーカードにメッセージを書いたりした。
ところがメッセージを書くため、カードを開こうとすると、毎回音楽が流れてくるので、ようちゃんに気づかれそうになり、その度みんなはドキドキするのであった。
オラもようちゃんのプレゼントを探しつつ、菊ちゃんとあけちゃんとのお別れの時に渡す彼らへのプレゼントも一緒に探す事にした。
マッキーはようちゃんの誕生日の翌日にはあけちゃんと菊ちゃんとお別れしてしまうので、彼らへのプレゼントはオラが預かることにした。
そして誕生日当日……。
ようちゃんの誕生日パーティーは、20時からマルワホテルの男部屋で行なうこととなった。
パーティーでの食事や飲み物は、アスワンの街で買い揃えることにしたが、これがなかなか大変であった。
まずお酒に関して……。
現地の人は宗教上飲酒を禁止されているため、お酒はどこにでも売っているわけではなかった。
観光者用のリカーショップが夜だけ開くので、タクシーでわざわざ買いに行った。しかも値段は割高だった。
それからジュースやお酒を飲むためのコップは、仲間が常備している物だけではあと3人分足りなかったので、街に買いに行くことにした。
ところがなかなかコップを売っている店を見つけることができない。
そのまま街をフラフラ歩いていると、アイスクリーム屋を発見した。
そうだ、アイスクリームが入ったこの紙のカップをコップ代わりに使おう。
オラはカップだけ売ってくれないか交渉したがダメだった。
仕方がないのでアイスを3つ買い、その場で一気食いしてコップを確保した。
ケーキに関しては、ぷる君と少々揉めることとなった。
オラは駅前のお店にショートケーキが売っているのを思い出し、マッキーとぷる君と菊ちゃんを連れて買いに行った。
しかし、ぷる君は不満そう。
「誕生日ケーキはホールケーキじゃないと意味ないよ」とダダをこねだしたのだ。
でも他のケーキ屋なんて、見当たらなかったし、早くしないとみんなを待たすことになる。
オラはぷる君の誕生日の時はホールケーキにしてあげるからと言ってなだめた。
宿に戻ると他のみんなが、部屋を折り紙などで可愛く飾ってパーティー会場を作り上げてくれていた。
さぁ、これでパーティーの準備は整った。
隣の部屋からようちゃんを招き入れるとみんなは、思い思いのプレゼントをようちゃんに手渡した。
そしてドラえもんに扮装した菊ちゃんが、みんなの代表となり、四次元ポケットの中から(小さいリュックサックを前向きに担いで)メッセージカードを取り出し渡した。
ようちゃんは、旅の仲間に祝ってもらい大喜びであった。
この後みんなは、旅のぶっちゃけ話に盛り上がり、悪いことも良いこともいい思い出になったとお互い笑い転げた。
僕らは、今までの仲間での旅の思い出を振り返り、この仲間でいられる最後の夜を思う存分楽しんだ。
オラは、このメンバーで旅できてホントに良かったなぁ、と実感したのであった。
アスワン滞在2日目……。
――早朝3時。
携帯電話のアラーム音で目が覚めた。
ついさっき布団に入ったと思ったら、もう起きないと駄目なのか……。
昨日遅くまでみんなと飲んだせいで、ほとんど寝ていない状態でアブシンベル神殿バスツアーに参加しなくてはいけなくなった。
でもアスワンからアブシンベル神殿までは約3時間の移動時間があるので、残りの睡眠はバスの座席でとればいいと思い、オラはしんどい身体を無理やり起こして、仲間の布団を剥ぎにいった。みんなも眠そうな目を擦りながらツアーの準備を始めた。
マイクロバスがホテルの前に迎えに来たので、僕らは順番に乗り込んだが、最後に乗車したオラだけはまともな席があたらず、運転手と助手席の間にある補助席に座らなくてはならなかった。
しかもオラが座った補助席は背もたれが壊れていて全くリラックスして座ることができなかった。
オラが小学生の頃なら「景色が良く見える特等席だ。わーい!!」といって喜んでいたところだが、今のオラは眠気との戦いの方が辛かった。
そうこうしている間に3時間が過ぎ、アブシンベル神殿のチケット売り場の前にバスは到着した。
そこは海のようにだだっ広いナクル湖に突き出た小島のほとりであった。
バスから降りるとピューピュー強い風が身体に当たりとても肌寒い。
オラはケニアのマサイ族からもらった赤いチェックのマサイマントを羽織って、そのへんをうろちょろしていた。
他の観光客から見たら、きっとオラはどこかの国の民族だと思われていたであろう……。
アブシンベル神殿は、砂岩の岩盤を削って作った、高さ33メートルの巨大な岩窟神殿である。
初めて目にした瞬間は、思わずおおっと声を上げてしまうぐらいでかくて迫力があった。
そしてこの神殿は1960年代の『アスワン・ハイ・ダム』の建設によって湖に沈む予定だったが、ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)の協力で60メートル高い場所へと移動させられた。なんとまぁスケールのでかい話である。
その後、ツアーバスは、高さ110m、全長3,600mの巨大ダム『アスワン・ハイ・ダム』や、そこからナイル川を10キロ下った場所に位置するフィラエ島の『イシス神殿』などを観光してまわった。
しかしオラはみんなが観光している間、見たい気持ちはあったもののあまりの眠たさに耐えられず、こっそりお土産屋のベンチで横になることにした。
ふと振り向くとあけちゃんと菊ちゃんもベンチに横たわりダラダラしていた。
どうやらふたりともバスであまり寝られなかったようだ。
アスワンのマルワホテルに帰ってきたのは15時半だったが、そこから夕食まで全員睡眠タイムになったのはいうまでもない……。
アスワン到着3日目……。
オラとマッキー以外の仲間達7名は、この後、ルクソールを観光してカイロに戻る予定だ。
マッキーはおじいちゃんの一回忌のため一時帰国。そのためオラとマッキーはアスワンから早朝の列車でカイロに向かい、オラは無事カイロ空港でマッキーを見送ることができた。
1週間後、リゾート地ダハブで再合流予定だ。
ラムセス2世によって建てられたこの神殿は、岩を切り崩して作られており、高さ33メートル、幅も33メートルもある。
1960年代にアスワン・ハイ・ダムの建設で水没の危機が迫ったが、アブシンベル神殿はユネスコによって元あった場所から60メートル高い場所に移動されたのだった。
半日コースが40ポンド(約880円)、ロングコース(イシス神殿コース付)が50ポンド(約1100円)。
僕らは早朝4時発の『アブシンベル神殿』→『アスワン・ハイ・ダム』→『イシス神殿』→『石切り場』を回ってくれるロングコースのバスツアーを申し込んだ。
しかし、メインになるアブシンベル神殿とお昼休憩を兼ねたイシス神殿以外の観光場所に着くと、バスガイドのオヤジは面倒臭そうに、「ここは行かなくてもいいか?」と常に言ってくるのである。
アスワン・ハイ・ダムは、みんなが寄ってほしいと言ったので仕方なく停まるが、石切り場では、バスの前席に座っていた白人一人が寄らなくていいと言ってしまったため、オラが行きたかった石切り場を素通りされてしまったのである。
せっかく高いお金を払っているのに「その分、金返せ!!」と言いたかった……。
この島はオシリス神の島であり、イシス神がホルス神を生んだ島である。しかし、この神殿もアスワン・ハイ・ダムができ、水没する運命に……。
そこで、フィラエ島の隣のアギルギア島に移転された。カルナック神殿やルクソール神殿は新王国時代に造られたものであるが、このイシス神殿は末期王朝時代から建築されているので何百年か新しいのだ。彫刻技術も発達していて立体感のある壁画が描かれている。
各地のオベリスクなどは、ここから切り出された石が使われている。
オベリスクの作り方は、まず、石を切り出す直線上に切り込みを堀り、そこに木のクサビを差込む。
そしてクサビに水をかけると、あら不思議、木のクサビはしだいに膨張し巨大な岩盤がパカ~ンと割れるのだ。
こうして造られた石材は、船に積み込まれナイル川を下ってギザの巨大ピラミッドなどに変身したのだ。
24回目の誕生日だ、みんなが誕生日パーティーを開いてくれた。
生まれて初めての家族以外からの誕生日パーティー。
ケーキが登場。お酒が登場。お菓子が登場。うれしいなぁ~♪
そしてあけちゃんからプレゼントが!!
中身は便箋「これであなたの周りの大切な人へ沢山手紙を書いてください」って手紙付き。
サンキュー!! 菊ちゃんからも、便箋が!!
いざぽんからは奇麗なお姉さんのエジプシャンダンスのDVDが(笑)日本に帰ったら楽しみに見ます!!
ダイタ君からもエジプト土産のパピルス画。
クレオパトラとラー神の絵が描いてある。
日本帰ったら大切に額に入れて飾るよ、そしてすげーセンスの良いマフラーまで!!
ぷる君からはお菓子の詰め合わせが(笑)アメちゃんにチョコレートがごっそり!! 食べ切れないよ~。
でもありがとう。
そしてめぐみちゃんからは、何故かパンツのプレゼント? 最後にみんなからの寄せ書きが……。
ようちゃんへって、オレのことが褒めちぎってある寄せ書き……。
これが一番嬉しかった!
そこら中の人に自慢して回りたかった!! 一生の宝や!!
その後は夜遅くまでみんなで飲んでゲームしてマジトークして、今までよりもっと仲良くなれた気がした。
人生最高の誕生日♪